校長室より

2025/05/01
自由と平和のパラダイス
打出中学校には2つの大きな石碑があり、開校以来79年を迎える長く受け継がれてきた歴史と伝統を語りかけています。
ひとつは、「明朗・闊達 自主・力行」という校訓です。この校訓には、明るく朗らかで広い心をもち、自ら進んで何事にも力を尽くす人になってほしいという願いが込められています。
もうひとつは、校歌にもある「自由と平和のパラダイス」です。開校時の昭和22年は、戦後の再建期にあたり、自由や平和に対する市民の思いは本当に計り知れないものがあったと考えられます。だからこそ、この意味をしっかりと問い正すことが大切です。
自由とは、決して勝手気ままにしてよいという意味ではありません。自由であるためには、自分の行動に責任が求められるということです。また、平和は与えられるものではなく、自らで築き上げるものです。

心理学に「セルフモニタリング」という言葉があります。自分の日々の生活や行動、気分などを客観的に分析することで、自己コントロール能力を高めることです。校門に据えられた「自由と平和のパラダイス」の石碑を目にするたびに、自分自身をふりかえり、自身の成長につなげてほしいと思います。その力を結集して、生徒の皆さん一人ひとりが打出中学校をどのような学校にするかを決定していくことになります。
2025/04/25
世界から見た琵琶湖
滋賀県民の思いにより、琵琶湖が美しく保たれています。琵琶湖にとって深刻なのは、家庭排水、工業排水、農業排水などが流入して、養分が増加することで植物プランクトン等が異常発生してしまい、水が緑色になってしまうことです。このような水質悪化が起こらないように、下水道が整備されたり、環境への配慮がなされたりしています。
昔の話になりますが、今回も私の体験を紹介したいと思います。
コップ1杯の琵琶湖の水に、しょう油を1滴だけ加えて明るい場所に置いておくと、2週間もたてば黒板のような濃い緑色の水になってしまいます。なぜなら、醤油にはリンがそれなりに含まれていて、植物プランクトンの養分として申し分のないものだからです。このリンに注目した環境学習の成果が大いに評価され、滋賀県が主催する世界湖沼会議で発表できることになりました。
会場では同時通訳がなされ、様々な国々の方に発表を聞いていただけました。とくに、アメリカやドイツの方からは積極的な質問をいただきましたが、会場を見渡すと熱心に聞いている方は半分だけで、残りの半分の方はまったく興味を示していませんでした。ところが、次の方の発表では、今度はアメリカやドイツの方はまったく興味を示さずに、私の発表には興味を示していなかった方々が食い入るように聞いて積極的に質問していたのです。次の方の発表の内容は、「湖からどんどん魚を獲って輸出したことにより、湖の養分が減ってしまい、エサがなくなって魚が育たなくなってしまったので、法律をつくって小さな魚は売らないようにした」というものでした。
つまり、世界の半分は、魚を獲りつくしたことにより、魚が育たないほど湖の養分がなくなって困っていたのです。一方で、日本やアメリカ、ドイツなどは世界中から食料を輸入し、ゴミとなって行き場をなくした養分が湖にあふれて困っていたのです。私はとても申し訳のない気持ちになりました。

中学生時代は大切な青春の時間です。さまざまな出来事について、ひとつだけの見方で考えてしまっていることはありませんか。いろいろな人の意見に耳を傾けて、多面的に考えてほしいと思います。
2025/04/23
ブナの原生林の中で考えたこと
滋賀の奥山はようやく雪解けをむかえ、ブナの原生林にも春が訪れています。今回も、私の体験を紹介したいと思います。
漢字ではブナを「木無(きへんになし)」と書きます。漢字で「木で無い」とまで書かれているのは、乾燥するとねじれやくるいが生じるので、昔は家財に加工し難く役に立たない木とされてきたためです。
春先のブナの原生林は地面まで陽射しが届き、明るくて気持ちの良い場所でした。地面はふかふかで、ブナの落ち葉に覆われていました。あまりにもふかふかでやわらかいことを不思議に思い、落ち葉がどのくらい積もっているのかを調べてみることにしました。
ブナの原生林の地面は落ち葉が雪の重さで押し固められて、まるで「押し寿司」のように平らになっていました。平らな面の下は、分厚い落ち葉のやわらかい層がありました。さらに掘ってくと、再び平らな面が現れ、その下は分厚い落ち葉のやわらかい層がありました。さらに掘っていくと、再び平らな面が現れ・・・。地中の平らな面は全部で4層もあり、かなり深いところまで落ち葉が積もっていました。意外にも、4年分の落ち葉が腐らずに残っていたのです。クリやクヌギの落ち葉は腐りやすくてたった1年で落ち葉が土に変わってしまうこととは大違いでした。分厚い落ち葉の層をつくることができるブナだからこそ、川をせき止めて水をためるダムと同じように、雪解け水をスポンジのように多量にたくわえることができることがはっきりとわかりました。木材として役に立たないとされてきたブナは、琵琶湖の水源として大切な存在なのだと実感しました。

中学生時代は大切な青春の時間です。いろいろな出来事を体験する中で、はじめから嫌だとか役に立たないと決めつけて切り捨ててしまうことはありませんか。いろいろなことに挑戦して、自分の可能性を広げてほしいと思います。
2025/04/17
1秒にこめた思い
学校だよりの第1号で「たった1秒で思いを伝えることができる言葉」について掲載しました。言葉は、つかい方次第で、「花束」を受け取ったかのように、嬉しいものになります。例えば、「おはよう」、「こんにちは」という1秒の言葉で、お互いの心の壁が低くなって親しみを感じることができます。言葉を上手く伝え合うことを意識して、さらに一層「いい声」のあふれる居心地のよい学校にしていきたいと考えています。
さて、昔のことになりますが、私の心に残っている「1秒にこめた思い」について、直接お聞きした話を紹介したいと思います。
合唱団京都エコーの浅井敬壹(あさい けいいち)指揮者は、「千年の古都・京都に世界一の合唱団を」という理想を掲げて日々の練習に取り組んでおられたそうです。ところが練習に見合った結果が得られないことがきっかけで、団員の心が離れていくという苦い経験をされました。どうしたらよいかと途方にくれる中で、退団せずに自分と歩んでくれている一人ひとりにしっかり目を向けられました。すると、会社の仕事を急いで切り上げたり、子どもを家族に委ねたりして苦心して時間を生み出して参加している団員たちの現実をはっきり自覚させられたそうです。それならば自分ができることは何かと自問し、次のような信念を持って取り組むことを決意されました。
「団員が100人ならば、この練習時間の1秒は、100秒間に相当する。だからこそ、みんなから自分に預けてもらった1秒1秒を無駄にせず、団員にとって『楽しかった、やりがいのある時間だった』と感じてもらえるように工夫してがんばりたい。」
以上のような心構えで臨んだ練習によって、同団を率いて、全日本合唱コンクールで20年連続金賞を達成されました。

中学生時代は大切な青春の時間です。相手の1秒の時間を大切にすることを心がけることで、「いい汗」をかいて夢中になれるような楽しくやりがいのある時間をつくってほしいと思います。
2025/04/15
サクラの花によせて
打出中学校の新学期は、満開のサクラ並木に迎えられました。PTAの皆様から贈られたプランターにもチューリップなどの様々な花が咲いているので、この機会をとらえて1年生で「花のつくり」を学習しています。
理科の授業では、花は中心から雌しべ、雄しべ、花弁、がくの順に並んでいることや、種類によって花弁の枚数が決まっていることなどを学びます。ところが、基本には応用があるように、よく観察しないとだまされてしまうことがあります。
例えば、サクラの花弁の基本数は5枚ですが、八重桜の花弁は6枚以上あります。また、チューリップの花弁の基本数は3枚ですが、6枚に見えます。これはいったいなぜなのでしょうか。
八重桜をしっかり観察すると、先端に雄しべにある「やく」という部分が付いている花弁をたまに見つけることができます。このことから、雌しべが花弁に変化して、花弁のように見せかけていたことが分かります。同様に、チューリップをよく観察すると、内側の3枚と外側の3枚の色が微妙に異なっていることが分かると思います。このことから本当の花弁は内側の3枚で、外側の3枚はがくが花弁のふりをしていたことが分かります。

このように基本をもとにしてよく考えることで、本当の姿を理解することができます。これから始まる学校生活では、覚えたことをもとに考える姿勢を一層育んでほしいと願っています。
2025/03/20
人のせいにしない
 「言われた通りにやっただけで私は悪くない」など明らかなミスをしたときにも「すぐ他人のせいにする人」はいませんか。他人のせいにしてしまう人は、“私は悪くない”という自己防衛本能が強い人が多いようです。何かが起こった際に責任をとりたくない意思が働いて、自分以外の身代わりを見つけようとします。自分の責任を認めることを避けるので「謝らない」「言い訳ばかり」「自分で解決策を考えない」「周囲の人からの信頼がない」などの特徴が出てきます。
 「幸せになるには、誰かのせいにしない」ことが大切です。人生は自分次第。自分で幸せと感じられるかどうか。自分より大変そうな人生を送ってきているのに幸せそうに生きている人もいます。逆もしかりです。人生って本当にみんなバラバラでいつ何があるかなんて誰も予測もできません。幸せと感じられる人は感じられるし、感じられない人は感じられないのです。どこまで行っても完璧な世界はありません。
 他人のせいにしても何も解決しない。他人のせいにするのは自由かもしれませんが、人のせいにしたところで、現状は変わるものではありません。「この人のせいで」とか「あんなことがあったからだ」と理由は見つかった感じはしたけれど、結局そこから何も生まれてきません。「自分でなんとかする」ということでしか解決も方法はないのです。相手を変えようとするより自分を変えたほうが、次にまた何か問題が起きた時もスムーズに対応できます。

2025/03/16
涙を流すのは人間だけ
 涙を流すのは人間だけって知っていましたか。人間には目の機能を保護する基礎分泌的なもの、外部からの刺激による反射的なもの、加えて感情が高ぶることによる感情的なものの3種類の涙が備わっていると言われています。喜びや悲しみなどの感情的な涙は人間だけに備わったものとも言われています。人間以外の動物もゴミが入った時など目の健康を保つために眼から水分を流すことがありますが、感情的な涙とは違うらしいです。ウミガメが産卵するときの涙も体内の塩分を外に排出するためだそうです。
 人間が感情的に涙を流すメカニズムは解明されていませんが、人間は他者とのコミュニケーションをとりながら生活するので、相手に自分の感情を伝えるための手段のひとつに涙を流すという説があります。泣くことは心身共にメリットが多くあるらしく、嬉しいときも悲しいときも、気持ちの高揚を落ち着けようとする体の反応だそうです。
 大いに笑い、大いに泣くことは大切なことですね。
2025/03/14
誰かのために・・・
誠実さとは、誰に対しても嘘偽りなく真心を持って優しい心で接することです。
謙虚さとは、自分自身の能力や地位などにおごることなく、どんな時も相手の意見に耳を傾けることです。

大好きな人と素敵な人生を歩みたい、誰にでも親切に誠実に接したい、誰かのために役に立てるようになりたい、実はこう思うだけで人は大きく変われるのです。
誰かのために頑張りたいと思う気持ちは自分自身のことよりも強い力を発揮します。

気持ちが変われば行動が変わります。
行動が変われば言葉遣いや考え方も変わってきます。
そしてそれはやがて姿勢や顔の表情まで変えてくれます。
誰かのためにという原動力が実は大きく変われるチャンスなのだと思います。

3学期も残り少なくなりました。自分を成長させ、有終の美を飾れるよう意識して生活していきましょう。
2025/03/11
素晴らしい卒業式でした
本日、「第78回 打出中学校 卒業証書授与式」が行われました。とても心温まる感動的な卒業式を終え、胸に込み上げるものを感じます。3年生の皆さん「ありがとう」君たちと共に過ごせた「縁」に感謝するとともに、校長として「誇り」を感じます。巣立ちゆく君たちの前途が洋々たることを心より祈っています。
 保護者の皆様には、これまでの3年間、本校の教育活動にご理解とご協力、多くのご支援をいただきました。心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 それぞれ今後のご活躍とご健勝を祈念申し上げます。

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2025/03/08
卒業に向けて
「初め有らざるなし克く終わり有る鮮し」
 初めはだれでも計画を立てて一生懸命にやるが、それを最後までやりとげることは難しいという意味です。これが語源となって立派にやりとげることを「有終の美」という表現をするようになったと言われています。いよいよ3年生にとって中学校での最後の授業とも言える卒業式を迎えます。「有終の美を飾る」意味を込めて、感動的で素晴らしい卒業式になるようしっかり心の準備をして臨んでほしいと思います。
 さて、皆さんがよく知っている偉人の野口英世さんは、「変えられるものが2つある。それは、自分と未来だ」と言っています。中学校3年間の中でも自分を成長させるために何回も「次こそは・・・」と考えたことが多くあったでしょう。3年生の皆さんにとってこの春はそれぞれに新しい場所で、新たなスタートをきるという環境が大きく変化する時です。自分を変える大きなチャンスと言えます。失敗か成功かは自分の感じ方次第です。考え方は人それぞれ。同じ話を聞いていても、人によって受け取り方は違います。同じものを見ても、『気づく人』と、『気づかない人』がいます。結果を恐れずチャレンジするきっかけがこの春には多くあります。3年生の今後の活躍を期待しています。

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