校長室より
2023/09/04
「カバタ(川端)」の暮らしに学ぶ
滋賀県高島市新旭町針江地域。カバタ(川端)の水文化で有名な場所です。比良山系に降った雪や雨が伏流水となって湧き出る川の水や井戸水を家の中に引き込み、洗い物や飲み水などに利用しています。この水場のことをカバタ(川端)と言います。針江地域では各家庭に地下から湧き水が自噴しており、水温は年間を通してほぼ一定。夏は冷たく冬は温かで地域内に張り巡らされた水路が家と家をつなぎ、鯉が自由に泳いでいます。各家のカバタは、元池、壷池、端池(はたいけ)の3つの場所から成り、湧き水を取り入れる<元池>、水をくみ上げる<壺池>、あふれ出た水を溜めておく<端池>の機能となっています。壺池は飲み水に、端池は野菜や食器などを洗う水として利用され、野菜の洗いかすや食器についたご飯粒などは鯉が餌として食べ、水はいつも浄化されます。泥のついたものはタライで下洗いをし、すすぎだけカバタで行う。そんな暗黙の約束事が守られ、下流への配慮が根づいています。針江に住む個々の人々の相手を思いやる心がなければ成り立たないカバタの素晴らしい文化です。人間関係を円滑にするヒントがあるようです。
2023/08/29
校訓 「明朗 闊達 自主 力行」
打出中学校の校訓は「明朗」「闊達」「自主」「力行」の四つの言葉で成り立っています。「明朗」とは明るくて朗らかなさま。「闊達」とは心が大きく、小さな事にこだわらないさま。「自主」とは他の力に頼らないで自分ことは自分でするということ。「力行」とは力を尽くして行なうこと。「自主」は「自立」とも言います。赤ちゃんは、オギャーと泣くことはできても、ほとんど自立はできず親に頼らなければなりません。また、歳をとったり病気になったりすれば、自分ですることができないこともたくさん出てきます。心も体も大きくなり、立派な中学生である皆さんは自分の日常生活を振り返ってみてどうでしょうか。いろんなことを誰かにやってもらうのが当然だと思ってはいませんか。自分の力で一度頑張ってみる、これが「自立」の第一歩です。
もう一つ、同じ「じりつ」でも「自律」という言葉があります。自律とは「自分を律する」ということ。皆さんはちょうど大人になる入り口に立っており、時には子ども、時には大人とみなされます。正しい判断や行動が求められる上に周りの人とうまく関わっていくために、自分の気持ちをコントロールする力が必要となります。ここには我慢もひつようになります。
指示されなくても自分で考えて行動を起こすことこそ自立・自律であり、「自主」です。打出中学校の生徒ならやってくれる、やれる気がします。頑張っていきましょう。
2023/08/21
「五事を正す」(中江藤樹)
「近江聖人」と称えられた儒学者の中江藤樹は「人は誰でも天から与えられた美しい心を持っている」と信じ、その美しい心を「良知」と呼びました。現在の滋賀県高島市安曇川町の出身です。私はこの安曇川出身ですので身近に中江藤樹先生の教えを幼いころから学んできました。藤樹先生の日常で心掛けたい5つの教えを「五事を正す」といいます。「五事」とは、「貌(ぼう)」「言(げん)」「視(し)」「聴(ちょう)」「思(し)」です。「貌」=和やかな顔つきで人と接し、「言」=思いやりのある言葉で話しかけ、「視」=澄んだ目で物事を見つめ、「聴」=耳を傾けて人の話を聴き、「思」=真心を込めて相手に接することです。
私たちは、互いに支え合って生きています。よりよい人間関係を築くには、自分の思いばかりにとらわれず、自らを律したうえで、どのように周囲の人々に尽くし、協力していけるかを考えることが大切なのではないでしょうか。少しでも、近づけるように日々精進していきたいと思います。
今週末から2学期が始まります。元気な笑顔で会えることを楽しみにしています。
2023/08/01
『17年ゼミの秘密』
8月になりました。連日暑い日が続きます。さて、セミの一生って知っていますか。幼虫の期間は種類によって異なりますが、短くても3年。クマゼミは5〜6年間土の中で過ごします。でもどのセミも成虫の期間は約1か月と短いのです。それだけ長い時間をかけて成虫になるセミですが、種類によってはもっと長く幼虫として地中で過ごすセミもいます。
『17年ゼミ』と言われる種類で、名前の通り17年間も地中にいます。地上に出てきて1ヶ月は「子孫を残す」ことが大きな仕事になります。この17年ゼミはきっちり『17年間』地中にいて、17年毎に一斉に成虫になるそうです。少しずれて16年や18年で成虫になってもおかしくないだろうにと思うのですが・・・。
セミ同様、私たちも限りある命を生きています。一度きりの人生だからこそ「期限」からは逃げられません。どうせ生きるなら未来の自分を大切に大きな夢を描きたいものです。何もしなければ夢は実現しません。その実現のためには「期限をどこに設定するか」「目標をどの高さまでもっていけるのか」が大切になると思います。たっぷりと時間のある今、自分の将来に思いをはせる時間が取れるはずです。ぜひ考えてみてください。
2023/07/18
常識を変える
虹は何色ですか。七色です。松田聖子の「硝子のプリズム」の歌にあるように虹の色は一般的に外側から順に「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」と考えられています。ちょっと古いですかね。でもこれは日本人での認識であり、世界共通の認識ではありません。例えば、アメリカやイギリスでは6色、ドイツやフランスでは5色、インドネシアでは4色と考えられているようです。
日本では昔から虹は7つの色からできていると言われていますが、虹の持つ意味や言い伝えなどを紹介します。この七色は人間の体にある7つのエネルギーの入り口を意味していると言われています。尾てい骨、下腹部、おなか、胸、喉、眉間、頭頂です。虹は浄化も意味しているとされ、虹を見ることで乱れていたエネルギーが入れ替わって心身ともに元気になることができるそうです。
2023/07/10
顔が見えないからこそ
スマホは、非常に便利な道具ですが、使い方を誤ると友人関係のトラブルや犯罪に巻き込まれたりする危険性があります。また、そのつもりがないのに自分が誰かを攻撃してしまうなどの加害者になる危険性もあります。トラブルの多くは、メール、サイトを閲覧したり、様々なアプリを利用したりすることで起きます。便利なアプリが知らないうちに、個人情報を流出させているかもしれません。危険性があることもよく理解した上で使用することが大切です。LINEやTwitterなどのSNSの利用で誹謗中傷やいじめなどに発展するケースがあります。直接面と向かって話をしているわけではないということも相まって、相手のことを考えた発言ができなくなってしまうのでしょう。「ここにはいないから」という安心感もあるのだと思います。
顔が見えないSNSの場だからこそ、利用に関して、必要以上に注意をすることが大切です。もう少しすれば夏休みに入ります。スマホだけでなく、様々な行動をする前に「これでいいのか」を考えながら行動することが大切ですね。
2023/07/03
横文字社会
最近「インフルエンサー」という言葉をよく耳にします。意味は、世間に大きな影響を与える人とか人々の購買活動に強い影響を与える人を指すのだそうです。これまではテレビなどで活躍する有名人がインフルエンサーでしたが、最近では「ユーチューバー」がインフルエンサーの代表的存在だそうです。新型コロナ感染症によりカタカナ語が急増したように感じています。「クラスター」「ソーシャルディスタンス」。次々と登場する新しい言葉に私だけが混乱しているのでしょうか。クラスターは集団感染、オーバーシュートは感染爆発、ロックダウンは都市封鎖の方がわかりやすい気もします。
初めて聞く言葉を使うことで、メディアや国民が注目し、話題を集めやすくしているのかもしれませんし、正確な日本語訳がないのかもしれません。「都市封鎖」と聞くとその言葉に恐怖心をあおられるのかもしれません。と考えると表現を柔らかくするために敢えて使っているのかもしれません。バランスが難しいですね。
2023/06/26
急がば回れ
このことわざは昔、連歌師の「宗長(そうちょう)」が詠んだ「武士(もののふ)の矢橋(やばせ)の船は早くとも 急がば回れ 瀬田の長橋」という歌がもとになっています。「東海道で京(京の都)まで行くには矢橋の渡し船を使って琵琶湖を横断したほうが近道だが、琵琶湖西側にある比叡山から吹き降ろす突風で船が転覆する危険があるため、確実な移動方法を選ぶならば、瀬田の唐橋(長橋)を渡って大津に行くほうがよい」ということです。
また、渡し舟では到着時刻が不確定なため、瀬田の唐橋経由で戦の戦法と時刻を決めたとも言われています。「唐橋を制する者は天下を制す」というくらいにここ大津にある瀬田の唐橋は歴史上多くの戦いがありました。
早く着くことが目的ではなく、勝つことが目的。早く覚えることが目的ではなく、深く理解することが目的。勉学にもつながる教えですね。
2023/06/19
「一笑一若一怒一老」
生後間もない赤ちゃんが笑うのはなぜでしょうか。生まれてすぐの赤ちゃんは「楽しい」とか「嬉しい」といった感情は持っていないのに自然と笑顔を作ります。これはお母さんに可愛がって育ててもらうための本能的な笑顔だそうです。そして、赤ちゃんは本能的に「笑う」事によって周囲の人が笑顔になり、優しくしてくれる事を体験して「この表情をすれば優しくしてくれる」と学び、笑顔を繰り返すようになると言われています。一説では、笑いには「インターフェロンの分泌量を増加させる」という効果があると言われています。これが高まると快さへの耐久力を高めます。また、治る確率が非常に低い難病の患者が笑いによって完治した例もあります。
中国にあることわざに「一笑一若一怒一老(いっしょういちじゃく、いちどいちろう)」があります。一度笑うと若返り、一度怒ると年を取るという意味。
笑顔あふれる打出中学校になりますように。
2023/06/12
非認知能力
人間の能力は、大きく「認知能力」と「非認知能力」の2種類に分けられます。「認知能力」とは、点数などで数値化できる知識理解の能力のこと。一方、「非認知能力」とは、数値化することが難しい内面的なスキルのことです。非認知能力の具体的な能力には、やり抜く力、自己肯定感、やる気、忍耐力、ねばり強く頑張る力、自制心、協調性、思いやり工夫をする力など子どもが人生を豊かにする上でとても大切な能力であると言えます。非認知能力は何歳からでも鍛えることが可能ですが、幼児期から学童期にかけて取り組むことが特に重要だと言われています。幼児期から学童期にかけての子どもは、新しいことに挑戦する力や、そこから多くのことを吸収する力が特に高いため、さまざまな非認知能力を育みながら、さらなる学びにもつなげやすく、多くの力をバランス良く伸ばしていくことができるからです。
幼児期や学童期は、たくさんのお友達と幅広く触れ合う機会が多いほか、家族で過ごす時間も長いもの。楽しい時間を共有する中で、自然と非認知能力を鍛え、子どもの将来につながるような豊かな力を育んでいけるといいですね。