校長室より

2026/01/14
馬は1本指で駆ける -ポケモンは進化するとはいえない-
今年は午(ウマ)年です。馬が駆けるように飛躍して、物事が大きく発展する「何でもウマくいく年」と言われてします。

昔から馬は大切にされ、日本の伝統行事と深いかかわりがありました。例えば、神事として馬上から的に矢を射る様子をテレビなどで見た人もいると思います。身近なところでは、毎年近江神宮で行われていますので、自分の目で実際に見た人もいるのではないでしょうか。この神事には馬術と弓術の両方を合わせた技が必要です。馬術は「動の動き」で、弓術は「静の動き」なので、それらを組み合わせてさっそうと駆ける様子は、たいへん見ごたえがあります。今年は6月1日に行われるそうですが、午年ということもあって、たくさんの方が見に行かれるのではないでしょうか。

さて、生徒の皆さんは、進化という言葉を聞いたことがあると思います。進化は中学3年生の理科で学ぶので、1、2年生は「ポケモンが進化する」といえば、聞いたことがあると思います。

例えば、ポケモンでは、ピチューがなついた状態でレベルアップするとピカチュウに進化し、ピカチュウに「かみなりのいし」を使うとライチュウに進化します。もちろん、他のモンスターについても、レベルアップが基本ですが、特別なアイテム(進化の石など)、通信交換、特定の条件(なつき度など)で、姿や能力が変化します。

ところで、3年生の皆さん、何かおかしいと思いませんか。「ポケモンの変化を進化とよんではいけない」ということに気づいていましたか。

進化というのは、生物が世代を重ねる間に遺伝的な性質が変化することです。簡単にいうと、私が生きている間に私が進化することはありえません。進化するというのは、私とは似ているけれど、私とはちょっと違う子どもが生まれ、それが繰り返されることで、子孫に私と異なる大きな変化ができてくることです。

つまり、「ポケモンの変化」を「ポケモンの進化」と言いたいのならば、ピチューが卵を生んで、その卵から進化したピカチュウが生まれ、ピカチュウが卵を生んで、その卵から進化したライチュウが生まれればよいのです。

実は、私たちが「ポケモンが進化する」とよんでいるのは、正しく言えば「ポケモンが変態する」なのです。

「変態する」とは、生物が成長するにつれて、特定の条件がそろうと、姿や能力を変化させることです。例えば、カブトムシの幼虫は、十分な成長と適温があれば、さなぎに変態します。そして適温と十分な時間があれば、さなぎがカブトムシの成虫に変態します。チョウやセミ、ホタルなどの多くの昆虫も同様に、幼虫からさなぎ、成虫へと変態して、姿や能力を変えることで新しい環境へ旅立つのです。

このように、生きている間に自分の姿や能力を変えることは、進化と言わずに変態とよぶのです。

さて、ウマは、進化を説明するときに、例として必ず登場する動物です。ウマは私たち人間と同じ「ほ乳類」というなかまなので、基本的な構造が同じです。例えば、私たちの手足が全部で4本あるように、ウマも前足と後ろ足を合わせると4本あります。また、ウマの足の指は1本しかないように見えますが、ちゃんと調べると、それぞれの足に私たちと同じように5本の指があるのです。

ウマとよぶことができる特徴を持った生物が地球上に誕生した時代には、キツネくらいの大きさの動物だったと考えられています。この時代は暖かく、森の中で木の葉を食べるのには適した大きさだったそうです。ところが、地球環境が大きく変化し、ウマの先祖にとって苦しい時代が始まったことがわかっています。地球は、寒冷化するとともに乾燥が進み、大森林がなくなって大草原となり、やがて大草原も荒野をはさんでとぎれとぎれとなりました。このような環境の変化に合わせて、大草原で肉食動物から逃げきるために、速く走る能力が求められました。また、とぎれとぎれの草原にたどり着くために、長い距離を歩いても疲れないことが求められました。

これらの問題を解決するために、生徒の皆さんもウマの気持ちになって、四つんばいで走ってみましょう。できるだけ速く走るためにはどうすればよいですか。手を「パー」の形で走るよりも、5本指をそろえて走る方が効率的です。そして、手のひらや、足のうらを地面にべったりつけて走るよりも、つま先立ちで走る方が速く走ることができると思います。そして、5本指をそろえて走るときには、最終的に一番長い中指だけが地面に触れていることに気づきましたか。

このような理由で、ウマは5本指を合体させて、特に中指だけを発達させることで、足全体を軽くし、走るときの効率を高めたそうです。ウマは、人間の中指の先端で立っているような状態であり、1本指で走っているのです。そして、1本指で走るために、中指の骨は太くなり、つめは「ひづめ」となって中指を守るように進化しました。

馬が強力な1本指でさっそうと駆けるように、私たちも大いに飛躍してよい1年にしていきましょう。

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2026/01/09
肉食のウサギ
スキー場などで雪の上にウサギの足跡を見かけることがあります。ウサギの足跡のならび方は「ケンケンパー」に見えるのでとても分かりやすいです。

たてに2つならんだ「ケンケン」は前足の足跡で、横に2つならんだ「パー」は後ろ足の足跡です。ウサギの走り方は、前足をトントンと前後に置いてから、長い後ろ足を左右に開いて前方に置きます。そのため、「ケンケン」→「パー」の向きにウサギは進んでいるのです。

生徒の皆さんは、テレビや動物園などでウサギを何度も見ていると思います。それでは、正面から見たウサギの顔を思い浮かべてみてください。

きっと多くの人は、サンリオのキャラクターの「マイメロディ」「クロミ」「ウィッシュミーメル」や、世界的に広く愛されている「ミッフィー」を想像するのではないでしょうか。あるいは、「ちいかわ」に登場するうさぎや、おぱんちゅうさぎを想像するかもしれません。他にも、ポケモンのうさぎっぽいモンスター「ニンフィア」「ヒバニー」や、しまじろうの友だちの「みみりん」を想像する人もいるかもしれません。

本当のウサギは草やニンジンを食べるので草食動物なのですが、草食動物に共通する体の特徴から考えると、以上の9種類のウサギのキャラクターは、すべて肉食動物になってしまうのです。

生徒の皆さんは理科で習ったことを思い出して、「ああそうか!」と気づいたのではないでしょうか。草食動物と肉食動物の違いは何でしたか。

草食動物は、目が顔の横についていて、敵をいち早く察知するために、真うしろに近いところまで見渡せるようになっています。一方、肉食動物は、目が顔の前面についていて、獲物を両目で見えるようにしています。両目で見ることによって、獲物との距離を正確に測ることができるのです。

このような法則に例外はありません。鳥についていえば、肉食動物のフクロウは目が顔の前面についていて、草食動物のハトは目が顔の横についています。同様に昆虫についても、肉食動物のカマキリは目が顔の前面についていて、草食動物のバッタは目が顔の横についています。

つまり、例にあげた9種類のウサギのキャラクターは、目が顔の前面についているので、肉食動物ということになってしまうのです。

本当のウサギは目が顔の真横についていて、顔を正面から見ると、目がわずかに細長く見える程度です。しかも、ウサギをおしりの方から見ても、わずかに目がのぞいて見えるのです。そのため、ウサギはふりかえらなくても、ほぼ360度という非常に広い範囲を見渡すことができます。その反面、口元が見えないので、口ひげで食べ物の位置を確かめているのです。

ところで、スターウォーズの映画には、目が顔の前面についている異星人と目が顔の横についている異星人が登場します。つまり、異星人にも肉食と草食がいるということになります。ところが、草食異星人と公表されている異星人の目が、必ずしも顔の横についているわけではなく、このことが残念でなりません。

同じようなことは、2026年現在も人気をほこっている仮面ライダーシリーズにも当てはまります。多くの仮面ライダーはバッタをモチーフにしています。特にライダー1号・2号はトノサマバッタの特徴を強く残したデザインになっています。その特徴とは、2本の触角や2つの大きな目、その間にある小さな目などです。もう生徒の皆さんはお分かりだと思いますが、バッタは草食動物なので目が顔の横についているはずなのに、仮面ライダーの目は顔の前面についているのです。

このように、いろいろな作品のキャラクターが、草食動物をモチーフとしていながらも、肉食動物のように目が顔の前面についているのには、実は大きな理由があります。

私たち人間は雑食動物なので、肉食動物のように目が顔の前面についています。そのため、私たちに親近感を持たせるために、作品のキャラクターをわざと人間に近づけているのです。生物として考えると間違っているのですが、それ以上にかわいさやかっこよさを大切にして創作されているのです。

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2026/01/06
アイデアを形にする方法
打出中学校を卒業され、漫才師としてM-1グランプリ2025優勝という快挙を成し遂げられた「たくろう」の赤木さん、受賞おめでとうございます。心からお祝い申しあげます。

優勝を機に、赤木さんのネタづくりの舞台裏がメディアで紹介され、Webにも公開されている独特な「ネタ帳」の存在が大きな反響をよんでいます。その「ネタ帳」は日常のささいなことや街で見かけたもの、会話の断片や意味不明の絵などが記録されており、膨大な量と独特の書き方の中にアイデアの種がつまった「魔法のノート」として注目されています。頭の中にインプット(入力)した情報を「ネタ帳」に言葉や図でアウトプット(出力)しながら多くの芸人やファンの方々から「天才」といわれるほどの笑いを生み出す過程が、夢を実現するために苦労に苦労を重ねる努力の積み重ねであったことにも感動しました。

さて、生徒の皆さん、アウトプットすることは昔から効果的なことだと言われています。授業中に、まず自分で考えたことを言葉や図でノートやタブレットにアウトプットしていると思います。そして、それを他の人に伝えようとする過程で考えていたことが整理されて、学習の質を高めているのです。アウトプットしないと、知識や考えていることがあいまいなままで終わってしまう可能性があるので、自信がなくても頭の中に浮かんだことを自分なりにアウトプットしてみましょう。

ところで「イメージマップ」という方法を使うと、どんどんアウトプットが進むのでアイデアを簡単に形にすることができるのです。とくに、劇の台本や小説を書くときに効果的です。

「イメージマップ」を試してみた生徒の皆さんが短時間で劇のシナリオや小説をなど書くことができて喜んでいましたので、その手順を説明したいと思います。劇のシナリオや小説などを書くときには、いきなりぶっつけ本番で書き始めるのは大変ですので、最初に全体のストーリー(筋書き)を考えておくことが必要です。ストーリーのつくり方のコツは、「6月30日掲載の『いないいないばあ! とヒット作品』」で触れましたので省略します。ストーリーが決まったら、次にプロットとよばれる設計図に重要な設定やアイデアを書きこんでいきます。このプロットとよばれる作業で「イメージマップ」を使います。

「イメージマップ」とは、中心にキーワードを置き、このキーワードからから連想する事柄を枝分かれさせ、さらに細かく関連する事柄を連想してどんどん図に書き加えていく活動です。

それでは、冒険小説のストーリーを「謎の島に漂着した主人公が様々な体験をして、たくましく成長して帰ってくる」とし、プロットを「あやしい石・不思議な植物・変な動物に出会う」ということにして、さっそく物語をつくっていきます。

「あやしい石」をキーワードとして「イメージマップ」を用いると、例えば「七色に輝く」とか「触れると情景が見える」とかが連想され、「触れると情景が見える」ということからさらに「親切にされた人を思いだす」などが連想されるので図に書き加えていきます。このようにしてキーワードに関連して連想した事柄を次々にアウトプットしていきます。その図を見ながら、主人公が「あやしい石」を見つけたときの具体的な行動を物語として文章にまとめていくのです。このように、あらかじめ「イメージマップ」を用いてキーワードからイメージを広げておくことで、豊かな内容の物語を書くことができるようになるのです。

もしかすると、「不思議の国のアリス」という有名な物語も、「ウサギの穴」「涙の池」「いもむし」などのキーワードから、「イメージマップ」で自由に連想した事柄をルイス・キャロルが書きとめたのかもしれません。また、ドラゴンクエストのようなロールプレイングゲームでも、旅先で出会う予定の事柄をキーワードにして、そこから自由に連想した事柄を壮大な物語にまとめていたのかもしれません。

他の使い方としては学習の整理などがあります。例えば、中心に「奈良時代」というキーワードを置くと、そこから「東大寺大仏」や「律令国家」などが連想され、そしてその「東大寺大仏」から「聖武天皇」などが連想されます。頭の中にあることをこのように順にアウトプットしてみると、理解が深まったり、不足している知識が明確になったりして、新たな気づきも生まれるものです。

「イメージマップ」を用いると連想したことが簡単に次々とアウトプットされるので、一度試してみてはいかがですか。
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2026/01/02
「模倣(もほう)」と「創造」
昔、海外へ出かけたときに、「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の両方のイラストが印刷されたTシャツが販売されていました。著作権料はどうなっているのだろうと思い、買うことはありませんでした。勝手に作品をコピーして販売することは禁止されているはずです。

自分で工夫してつくり出すのでなく、すでにできているものをまねることを「模倣」といいます。これに対して、人まねでなく新しいものを自分からつくり出すことを「創造」といいます。

生徒の皆さんは、「模倣」と「創造」の境界線をどのように引いていますか。

さて、「人魚姫」は世界中でよく知られている童話です。作者のアンデルセンはすでにお亡くなりになっていて、世界著作権保護期間を大幅に過ぎているので、これをもとにした小説や絵本、映画やゲームを誰もが自由につくることができます。このようにしてつくられた作品のそれぞれには、新たな著作権が生じます。その中のひとつ「リトル・マーメイド」は、世界中で愛されているディズニー作品です。そのため、「リトル・マーメイド」についても勝手にコピーして販売するようなことはできません。

「リトル・マーメイド」は、「人魚姫」をもとにつくられていますが、「人魚姫」の「模倣」なのか、それとも新たな作品として成立していて「創造」といってよいのか、生徒の皆さんはどちらだと思いますか。

そのことを考えるために、はじめに「人魚姫」の物語を連想するキーワードをいくつかあげてみましょう。人魚∞声とひきかえ∞無償の愛∞バッドエンド(ざんこくな結末)≠ェ物語を象徴していると考えられます。今度は「リトル・マーメイド」の物語を連想するキーワードをいくつかあげてみましょう。人魚∞声とひきかえ∞自立心∞ハッピーエンド(幸せな結末)≠ェ物語を象徴していると考えられます。

ところで、似ているか似ていないかを調べるときは、ベン図がとても役に立ちます。ベン図は数学者が考案した関係を調べるための手法です。

それではベン図で調べていきましょう。一部が重なるようにして2つの円を描き、一方の円を「人魚姫」として、もう一方の円を「リトル・マーメイド」とします。すると、2つの円の重なる区域には、2つの物語に共通した人魚∞声とひきかえ≠フキーワードが入ります。そして「人魚姫」の円の残りの区域には、無償の愛∞バッドエンド≠ェ入り、「リトル・マーメイド」の円の残りの区域には、自立心∞ハッピーエンド≠フキーワードが入ります。

このようにして調べていくと、「人魚姫」と「リトル・マーメイド」には、決定的な違いがあることがわかります。共通したキーワードがあるにしても、その他のキーワードが決定的に異なっています。つまり、「リトル・マーメイド」は「人魚姫」を「模倣」しつつも、ハッピーエンド≠ノ至るような新しい価値を「創造」していたのです。

実は、日本の「まなぶ(学ぶ)」の語源は「まねぶ」ともいわれています。先人の知恵を「模倣」することから学習が始まるという意味です。良いと判断した部分を主体的に取り入れ、最終的にその人ならではの独自性へと発展させることが大切とされているのです。

例えば、研究者は自分の研究を始める前に、関連する論文や文献をすべて読みこみ、何が分かっていて何が分かっていないのかを必ず把握しています。その上で、未解決の問題点について、自分らしく研究に取り組み、時代を一歩前へ進めておられます。

生徒の皆さんは、大好きな漫画のキャラクターや絵画を「模倣」して描いたことはありませんか。その積み重ねの中から自分らしい作風が育ち、新しい作品が「創造」されていくのです。
必要だと自分が判断したことを「模倣」して、主体的に考えながら、新しい価値を生み出していくことこそが「創造」なのです。

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2025/12/29
鉄砲と望遠鏡
新年の始まりを、黄金色に輝く太陽とともに晴れやかな気持ちで迎えたいものです。

お正月の太陽が「めでたい」といわれているのは、新年最初の光を浴びることで神聖な力を授かると日本神話でいわれていることや、日光が農作物の生長に欠かせないので一年の豊作を願うことなどに由来しているそうです。

さて、生徒の皆さんは、日本で初めて望遠鏡を自作して太陽の観測をした人が滋賀県にいたことを知っていますか。その人の名前は、国友一貫斎(くにとも いっかんさい)で、江戸時代に鉄砲をつくる仕事をしていたのです。

 当時の鉄砲は、火縄銃(ひなわじゅう)です。火縄銃は種子島に伝来して以来、扱いやすいことから戦国国時代の戦術を大きく変えたことで有名です。その頃は日本近海に外国船が現れており、日本の国防が心配されていたため、火縄銃や大砲の大量生産が求められていました。そこで一貫斎は、火縄銃製作方法の統一を図り、火縄銃製作のマニュアルをつくりました。このマニュアルがあれば、鍛冶職人の腕前でどんな大砲でも製作することができたそうです。当時、火縄銃の製作は、師匠から弟子へ伝える秘密として扱われていましたが、このようにして常識を打ち破ったのが国友一貫斎です。

一貫斎は、鉄砲の筒をつくる技術を生かして、自分が天体観測をするために望遠鏡を自作しました。

以前からレンズで光を集める「屈折望遠鏡」は製作されていましたが、鏡で光を集める「反射望遠鏡」では国産第一号となりました。しかも、オランダから伝わっていた「反射望遠鏡」よりも、倍率が高くてくっきり見える高性能なものでした。一貫斎は、この望遠鏡で月のクレーターや木星の衛星に気がつき、月・太陽・金星・木星・土星の見事なスケッチを残しています。

ところで、人類史上初めて望遠鏡をつくって天体を観測したのは、ガリレオ・ガリレイです。ガリレオは、望遠鏡で太陽黒点を観測し、黒点の位置が毎日東から西へ移動することから、太陽が自転していることを発見しました。

一方、一貫斎は1年以上にわたって計216回も、太陽黒点の連続観測を行なっています。試しに私はこれらの記録を順にならべてみました。すると、黒点の位置が決まった向きに毎日移動することがはっきりとわかりました。おそらく、一貫斎も太陽が自転していることに気づいていたのではないでしょうか。

一貫斎の科学への情熱と職人としての技術力は目を見張るものがあります。日々の仕事の中から、ひときわ大きな業績を残しておられます。国友一貫斎に関連して、長浜市国友町に国友鉄砲ミュージアムが開館しています。その名は今以上に日本中で知られてもいいように思うのです。

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2025/12/26
サザンカの花粉を運んでいるのは誰なのか
学校の中庭にサザンカの花が咲いています。サザンカの歌といえば、冬の情景を歌った童謡「たきび」が有名です。

「♪ さざんか さざんか 咲いた道 たき火だ たき火だ 落ち葉たき 『あたろうか』 『あたろうよ』 しもやけ おててが もうかゆい ♪」 

法律で「野焼き」が禁止されてゴミ焼却は認められていませんが、火事に気をつけて近隣に迷惑をかけないようにすることで、落ち葉たきは大津市でも認められています。小さい頃に「たきび」を歌いながら、落ち葉たきで焼き芋をした経験がある人もいるのではないでしょうか。

さて、サザンカの花を観察すると、多くの雄しべがあって黄色い花粉がたっぷり作られています。これらをかき分けると中心の雌しべのつけ根に、きらきらと光る水滴のような「みつ」がたくさん見られます。「みつ」はねっとりしていて上品で強い甘さがあります。サザンカのはちみつは、「まぼろしのはちみつ」ともよばれていて、市場に出回ることはほとんどないそうです。なぜなら、サザンカの花は冬に咲くため、ミツバチが活動できるような暖かい日にしか、はちみつを集めることができないからだそうです。

確かに、寒い日には野外でミツバチやチョウのような昆虫を見かけなくなります。それではいったい誰が、サザンカの花粉を運んでいるのでしょうか。

ミツバチやチョウのような昆虫や、カメやヘビのようなは虫類、カエルやイモリのような両生類は、変温動物です。変温動物は体内で熱をつくる能力が低く、気温が低くなると体温が下がります。そして体温が下がると、体内の化学反応を起こせなくなって動けなくなるのです。冬や気温が低い早朝に、これらの動物がじっとしているのは、動かないのではなくて動けないのです。

一方で、私たち人間やイヌのようなほ乳類は、気温が下がっても体温を一定に保つことができる恒温動物です。体温が下がっても動きがにぶることがなく、いつでも活発に活動できるのは、体内で熱をつくることができる能力のおかげです。同じように、メジロやヒヨドリのような鳥類も恒温動物なので、冬や気温が低い朝でも活動することができます。鳥たちが早朝から鳴いているのは、寒くても活発に動き回って、変温動物が寒くて動けないうちに、これらをつかまえて食べているのです。

ところで、クマやリスも恒温動物なので冬でも活発に活動できるはずですが、例外的に変温動物のように冬眠します。ただし、体温を維持しているという点では、体温を維持できない変温動物の冬眠とは異なっています。クマやリスにとっては、冬の間はいつも食べている食べ物が少なくなるので、体温を一段階下げて省エネモードにして、体温維持に必要な栄養を節約するのです。

以上のことを整理すると、誰がサザンカの花粉を運んでいるのか、生徒の皆さんはもうおわかりだと思います。

鳥が花の「みつ」を吸うのを目撃したときは、本当に衝撃的でした。鳥が、次々と枝や花にぶら下がりながら、くちばしを花に差し込んで「みつ」を吸っていたのです。黄緑色で目のまわりに白いリングがあったので、調べてみるとメジロという鳥で間違いありませんでした。つまり、メジロという鳥がサザンカの花粉を運んでいたのです。

野外で冬に咲く花の種類はそれほど多くありません。なぜサザンカが、大きい花をわざわざ冬に咲かせているのかを考えることで、今まで気づいてなかったことを考える機会になりました。

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2025/12/23
石を切る
「石の博物館」は京都駅北口を出たところにさりげなく存在しているので、意識して探さないと見過ごしてしまいます。また、博物館という先入観を持って探すと、ちょっとわかりにくいかもしれません。3年生の生徒の皆さんには、修学旅行の集合場所付近に存在するといえば、探すときには大きなヒントになると思います。

京都駅前の「石の博物館」は無料で見学でき、35ヶ国から集められた288種類の石が展示されています。この中から73種類の石が京都駅ビルの建物に実際に使用されているそうです。この 「石の博物館」は1か所だけでなく、6か所の「あずまや(壁がなく柱だけの小屋)」に分かれています。

私が「石の博物館」に気づいたのは偶然ですが、石を研究テーマに選んだこともあり、石材を見ることが増えました。(私が過去にどのように郷土の石の研究をしていたのかについては、「江若花崗岩体」と検索すると一番上に表示されますので、PDFで内容を見ていただけます。)

石を研究するためには、はじめにくだいたり切ったりする必要があります。そこで、石を切ることができる「岩石切断機」の出番です。「岩石切断機」は、ダイヤモンドの粒を外周に埋め込んだ円盤状の刃を回転させてどんなに硬い石でも切ることができます。ところが、切り口がこすれて熱くなりすぎないように刃に水を注ぐ構造になっているため、けずられた石をふくんだ真っ黒な水滴が周囲に飛び散ってしまうのです。研究用の切断機は直径10cm程度の石を切るのに3時間くらいかかり、その間に髪や服が真っ黒に汚れてしまうのが残念なところでした。

研究用の「岩石切断機」はどんなに硬い石でも切れるので「無敵だ」と称賛するほど高性能でした。ところが上には上があるものです。岐阜県の「関が原石材」という工場を見学させていただいたときには、直径が4メートル程もある円盤状の刃が巨大な石を切断していたのです。巨大な石から石の板がぐんぐん切り出されていく様子はとても迫力がありました。今から思えば、京都駅ビルの建物の壁や床に使われている大きな石タイルは、このように切り出されていたのでしょうか。

工場の方にお聞きすると、日本ではよい石材がなかなか手に入りにくくなっているそうです。石材のよい部分はすでに採掘されており、石材に穴が開いていたり、ひびが入っていたりすると商品価値がなくなるので、今では大部分を外国から手に入れているとのことでした。
石タイルは、耐久性や耐火性があり、傷や汚れに強いのでさまざまな場所に使われています。石タイルには宝石のような輝きを持つものや宝石がふくまれているものも少なくありません。月の光のような青白色の光が移動して見える黒っぽい花こう岩の石材としては、「ブルーパール(ノルウェー産)」が有名です。また、濃い赤色のガーネットの宝石をたっぷりふくんだ大理石の石材としては、「ガーネット・ラッシュ・マーブル(インド産)」が有名です。

お城の石垣や神社、お墓の石など、昔から私たちのくらしと石材は深い関係があります。近頃は、石の模様を印刷したものやセラミックでまねをしたものなど、石の味わいを生かした家具がたくさん製造されています。また、街角でも建物の壁や床、デパートの商品棚などをよく見ると、面白い石材が使われていることがあります。

身近なところでも、ちょっと違う角度から眺めてみると、いろいろな面白い発見があるものです。

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2025/12/19
「パクパク」の肉食と「モグモグ」の草食
生徒の皆さんは、歯や骨格を観察するときに一番大切なことは何だと思いますか。私は、「歯や骨の形」だと考えたのですが、それだけではないようです。

京都市動物園の方にお話を聞く機会がありました。歯と骨のつながりや骨と骨のつながりに注目して、体をどのように動かしているかを考えることが一番大切だそうです。

草食動物は「モグモグ」、肉食動物は「パクパク」と食べるという視点で、動物園を見学するとまた違う楽しさがあるそうです。「モグモグ」だから草食、「パクパク」だから肉食だと見学していると、どうしても動物が食べている場面を見たくなるのです。ところで、私たち人間は、植物も肉も食べることができる雑食動物ですので、「パクパク」と「モグモグ」のどちらの動作もできるのです。

例えば、ゾウのような草食動物のあごは、草をすりつぶすために左右に大きく動くのです。つまり、いつも「モグモグ」と口を動かして食事をしています。この「モグモグ」と草をすりつぶす動作は、口を大きく開いて素早く開閉する「パクパク」という動作ではありません。つまり、草食動物のあごのつくりは、草を効率的に食べるための構造になっているため、「パクパク」という上下の動作には適していないのです。

これに対して、ライオンのような肉食動物は、「モグモグ」と左右にあごを動かすことができません。あごの骨のつながりを調べると、「パクパク」と上下に動かせますが、「モグモグ」と左右に動かすことができないような構造になっているのです。ライオンのような肉食動物のあごのつくりは、獲物を捕らえて肉を引きちぎるために、「パクパク」と上下の動きに特化しているからです。

さて、琵琶湖博物館でゾウの歯を見せていただいたとき、歯の寿命について考える機会がありました。

ゾウの歯は口の奥にあり、食べた植物をすりつぶす役割を担っています。この歯は、私たち人間の奥歯にあたり、臼歯(きゅうし)という種類の歯です。ゾウはかたい植物を食べるため、臼歯がすぐにすり減ってしまいます。見せていただいた歯も、びっくりするほど前の方がすり減っていました。ゾウは、私たち人間とは違い、一生に5〜6回も歯が生え変わるそうです。そして最後の臼歯がすり減ってしまうと、草が食べられなくなってしまい、歯が寿命を終えるとともに自分自身の寿命を終えるそうです。

ところで生徒の皆さんは、日本に住む人の平均寿命は女性が87歳、男性が81歳と、日本が世界有数の長寿の国であることを耳にしたことがあると思います。そして、この平均寿命というものは、歯の寿命においても算出されています。厚生労働省の調査によると、日本に住む人の歯の平均寿命は歯の種類ごとに異なっていますが、約50年〜65年だそうです。つまり、人間の平均寿命と比べてみると、歯の平均寿命は20〜30年も短いのです。

昨年(2024年)の統計では、滋賀県の男性の平均寿命が81.78歳となり、初の全国1位に輝きました。女性も87.57歳で全国4位と伸びています。しかも、健康で自立した生活ができる健康寿命も、男性が80.39歳で全国2位、女性が84.44歳で全国3位となっています。これらは、滋賀県民の食事や生活の改善、地域の健康づくり活動、禁煙などの学校教育の成果が表れていると言われています。

歯についてもしっかりケアをすることで、さらに寿命をのばすことができるといわれています。健康は食生活からといわれるように、「パクパク」「モグモグ」としっかりと何度もかむことや、歯みがきの習慣を大切にして、健康的な生活を心がけていきましょう。

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2025/12/16
忍者の「まきびし」
忍者が使う道具といえば、「しゅりけん(手裏剣)」と「まきびし(撒菱)」が有名です。

「まきびし」は、ヒシという水草の実を乾燥させたものです。ヒシの実は3〜5cmくらいの大きさで、どのように置いても、とがった先が上になるような形をしています。したがって、忍者が「まきびし」をばらまくと、追いかけてくる相手はとがった先を踏まないように避けなくてはならず、そのすきに逃げきることができたと考えられています。

時代劇では鉄製の「まきびし」が登場しますが、ヒシの実を乾燥させた「まきびし」は、鉄製に負けないくらい丈夫です。しかも中空になっているため、地面にまくとカラカラと音がするほど軽いのです。

私が初めて「まきびし」に出会ったのは、金沢市の忍者寺です。忍者寺を観光で訪れたとき、数多くの隠し部屋、隠し階段、そして落とし穴まで忍者屋敷のようなしかけがたくさんあり、その一つひとつの意外性や完成度にたいへん驚きました。その体験の記念に2個入りの「まきびし」のお土産を見つけて買ったのです。この「まきびし」はヒシの実を乾燥させたもので、先は画びょうのようにとがっていて、ちょっと危険なものでした。

次に私が「まきびし」に出会ったのは、大津市伊香立の道路わきでした。たまたま道路工事をしていた場所に、灰色の粘土の地層があったので観察してみることにしたのです。すると、灰色の粘土の中に、「まきびし」の形をしたヒシの実がたくさん含まれていたのです。これらのヒシの実は真っ黒な炭のように変化していて化石になっていました。後で調べてみると、大昔に大津市伊香立まで琵琶湖が広がっていたので、その当時はこの辺りまでヒシなどの水草がたくさん生えていたそうです。

このようにヒシの実を探していると、打出浜の湖岸の石積みの間に流れ着いたものも意外とたくさんあることが分かりました。身近なところにたくさんあったことが驚きでした。確かに琵琶湖にはたくさんのヒシが生えていて、このヒシの実を食べるためにたくさんのカモが集まっています。カモには、渡り鳥としてシベリアなどから温暖で餌が豊富な琵琶湖へ移動するものと、一年中日本で生息するものがいるそうですが、今の琵琶湖にはとてもたくさんのカモが浮かんでいます。琵琶湖はカモにとって、冬を過ごすのに理想的な条件がそろっているのだそうです。

ところで、生徒の皆さんはヒシの実は美味しいものだと思いますか。

 水鳥を研究されている方のお誘いで、ヒシの実を食べる機会がありました。ヒシの実は緑色をしているうちに収穫して、塩を少し加えて20分くらいゆでてから、ラッカセイのように外側のからをむいて、中にたっぷりつまった白い部分を食べることができます。食べてみると、まるでクリのようにホクホクしてジャガイモのようにほんのりあまい栄養満点?の味でした。カモのように生で食べると、シャキシャキしてクルミのような味がするそうですが、私たちがそのまま食べることは衛生面から、おすすめできないとのことでした。

琵琶湖には今、カモの他にもたくさんの水鳥が訪れています。琵琶湖は多様な水鳥にとって重要な生息地であり、越冬地です。特に冬場は10万羽を超える水鳥が飛来するといわれるほど豊かな湖なのです。

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2025/12/12
津波(つなみ)は波ではない
地震でできる津波は、普通の波とは根本的に異なっています。

津波は、海底から海面までつながった巨大な水のかたまりが、一気に押し寄せてくるものです。簡単にいえば、津波は海全体が川となって流れてくるものなのです。普通の波は、風によって海の表面だけが動きます。これに対して、津波は、地震によって海底が跳ね上がったために海が持ち上げられて、海水全体が動きます。

東日本大震災での津波の高さは、場所によって大きく異なりますが、岩手県では海面から40.5mの高さが記録されました。この場所では、13階建てのビルの高さの水のかたまりが、川のように流れてきたのです。津波が押し寄せる速さは、沖合ではジェット機なみ(時速800km)ですが、陸地に近づくにつれて、スピードを落とすかわりに高さをどんどん増していきます。そして、津波が海岸に到達するときには秒速10m(時速36km)くらいになります。この速さでも、津波が見えてから走って逃げきることはオリンピック選手でも困難です。

さて、生徒の皆さんは、「稲(いな)むらの火」という物語を知っていますか。

津波に関する物語では「稲むらの火」が最も有名です。「稲むらの火」は、江戸時代に起こった南海トラフ地震による津波の記録に基づいて、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が書いた物語です。小泉八雲は日本を愛した作家です。小泉八雲は、西洋の神様がただ一つの全知全能の存在であることに対して、「日本人は人のために尽くした人たち(偉業をなした人たち)も神様のようにうやまう」ことを、物語「A Living God(生きている神様)」を通して、英語で全世界へ発信しました。この作品は翻訳され、「稲むらの火」として国語の教科書に掲載されました。

「稲むらの火」のあらすじは次の通りです。
〜高台に住んでいる五兵衛は、地震のゆれを感じたあと、津波がやってくることを予想しました。村人たちに危険を知らせるため、五兵衛は自分の田にある刈り取ったばかりの稲の束(稲むら)に火をつけました。火事だと思って消火のために高台に集まった村人たち。その眼下で、津波が村を飲みこんだのです。五兵衛の機転によって村人たちは津波から守られました。〜

主人公の五兵衛の実在のモデルは、濱口儀兵衛さんです。濱口さんは、この災害の後も橋を修理するなどの復旧につとめ、当時最大の海沿いの堤防を4年がかりで完成させました。しかも、これらに費やした莫大なお金はすべて私財を投じたものでした。人命を第一とするこのような偉業に対して、地元住民から神様のようにたたえられています。

ところで、津波の恐ろしいところは、海が見えない場所であっても決して油断できないところです。

東日本大震災では、津波が山を迂回して小学校を襲いました。児童と教職員の多くが犠牲になったこのような悲劇は繰り返してはならないことです。このような東日本大震災の記憶と教訓を後世に伝えるために、津波の最大到達地点に桜の木を植える活動が続けられています。 

南海トラフ地震のように、海溝型の地震は必ず津波を伴います。海が見えない場所でも地震と津波を一体として考えて1秒でもはやく避難することが大切です。

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