校長室より
2026/02/13
水芭蕉(ミズバショウ)に似ている座禅草(ザゼンソウ)が見頃を迎えます
座禅草最中(ザゼンソウもなか)という和菓子があります。この和菓子は、冬の妖精と呼ばれる座禅草をモチーフにした最中(もなか)です。この和菓子は、座禅草の形をした最中の中に、栗入りの甘いあんこがたっぷりつめられていて、見た目も座禅草にそっくりにつくられています。滋賀県高島市今津町の和菓子店が共同で企画しているお土産品なので、お店ごとの味は少しずつ違いますが、熱いお茶と一緒にいただくと絶品です。
この座禅草の花がそろそろ見頃を迎えていて、少しずつ観光客が増えてきています。写真は座禅草の現在の様子です。3月に入るともっと大きく生長するので、さらに見ごたえがあると思います。高島市今津町の座禅草は、あたり一面に生えていて、湿地に設置された木道を歩きながら見学することができます。この「座禅草群生地」は、JR近江今津駅から小浜行のバスに乗って、「座禅草前」というバス停で下車してから、歩いてすぐのところにあります。
さて、生徒の皆さんは、この花が座禅草とよばれる理由を想像することができますか。座禅草の花の写真を見ると、その理由にすぐに気づくのではないでしょうか。実は、紫色の苞(ほう)につつまれた黄色の花の姿が、お坊さんが座禅を組んでいる姿にそっくりなことから、座禅草と名づけられているのです。
そして、この座禅草は、水芭蕉(ミズバショウ)にとてもよく似ています。「夏の思い出」という有名な歌があるので、生徒の皆さんは、水芭蕉のことはよく知っているのではないでしょうか。
「♪ 夏がくれば 思い出す はるかな尾瀬 遠い空 (中略) 水芭蕉の花が 咲いている 夢見て咲いている 水のほとり ♪」
この水芭蕉が白色の苞(ほう)が黄色い花をつつんでいるのに対して、座禅草は紫色の苞が黄色い花をつつんでいるという部分が異なります。そして、それ以外はほとんど、同じような形をしています。なぜなら、両方ともサトイモのなかまだからです。どちらも早春に開花する春の代表的な草花として有名で、花を咲かせた後に、サトイモのような大きな葉を広げる植物です。
また、高島市今津町に生育している座禅草は、花の形が面白いことに加えて、もう一つの大きな価値を持っています。座禅草は2万年前の氷河時代の生き残りの植物なので、寒くて雪深い湿地でしか生育することができません。したがって、日本中を探しても、高島市今津町よりも南の地域には、座禅草は発見されていないのです。つまり、京都や大阪、四国や九州の人が座禅草を見てみたいと思ったら、一番近いのは高島市今津町の「座禅草群生地」になるのです。
ところで、「大発見をしました! 私は『座禅草群生地』のとなりの住宅地の周辺にたくさんの座禅草が生えていることを発見しました!」という連絡が私のところに入ることがたまにあります。なぜ、私のところに、そのような連絡が入るのかというと、「昔からここに生えていたけれど、この座禅草という植物は、たいへんめずらしいものである」ということを、最初に報告したのが、中学生の頃の私たちだからです。だからその方には、とても悲しい気持ちで、次のように説明しています。
「私たちが中学生の頃には、座禅草が付近一帯に生えていて、すごく見ごたえがありました。私たちの報告をきっかけにして、当時の大人がその価値に気づく前に、住宅地の造成工事が進んでしまい、今ではもとの何百分の1の面積にしか残されてないのです。『座禅草群生地』は、座禅草の価値に気づいた地元の方々の努力によって、かろうじて残すことができた一部分です。だから、住宅地の周辺に座禅草が生えていることは、不思議なことでも大発見でもありません。」
なぜ、高島市今津町のまちのど真ん中に、座禅草が2万年も生き続けることができたのでしょうか。調べてみると、この付近一帯は、昔から冷たい湧き水がこんこんとわきだしています。その湧き水は、広大なあいば野を源流としているので、枯れることがありません。湧き水によって、畑にして作物を植えても根が浮き上がり、水田にしても排水できないので稲刈りができなかったのです。だから、農地にできずにずっと放置されており、座禅草にとっては天国のような場所だといえるのです。
さらに、高島市今津町には多くの積雪があることも座禅草にとっては天国です。座禅草は、根にたくわえたデンプンを使い、花を咲かせるときに20℃〜25℃程度に発熱します。これにより、雪の中でもその暖かさで、昆虫を引き寄せて受粉することができます。このような仕組みで、他の植物よりもいち早く花を咲かせて種子をつくり、付近一帯を埋めつくすように増えることができるのです。
身の回りには、当たり前だと見過ごしているものの中に、かけがえのない価値を持っているものがたくさんあるように思います。見ようとしていないことで失ってしまうことがないようにしていきたいと思っています。
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2026/02/06
寒さを覚えさせないと発芽しない種子
生徒の皆さんは、パイナップルの種子を見たことがありますか。わが家のブームになったことなのですが、パイナップルの実の皮に近い部分に、ゴマのような形の黒っぽい種子を見つけることができます。そんなに多くはふくまれていないので、意識して探さないと見逃してしまいます。見つけた種子をよく洗ってから、水で湿らせたキッチンペーパーではさんで、暖かい日陰に置いておくと発芽させることができます。ただし、この方法では生長に時間がかかるので、実をならせるのに3年以上かかるそうです。
パイナップルと同じように、とくに南国産の植物の種子は簡単に発芽させることができます。例えば、アボガドの種子も、水でよく洗ってから、とがった方を上にして半分くらいが土から出るように浅く植えつけて、暖かい場所に置いておくと発芽します。
さて、生徒の皆さんは小学校の理科で、種子が発芽する条件を実験したことを覚えていますか。種子が発芽する条件は3つありました。その3つとは、水と空気(酸素)と適切な温度です。このことから、パイナップルやアボガドをうまく発芽させるコツは、水をやりすぎないことです。水をやりすぎると、空気(酸素)が種子に届かなくなってしまうからです。また、南国産の植物なので、適切な温度とは十分に暖かいということになります。
ところで、水と空気(酸素)と適切な温度さえあれば、本当に発芽するのでしょうか。
実は、種子が発芽する条件は、水と空気(酸素)と適切な温度の3つだけしかないと思いこんでいると、いくら待っても発芽しない場合があるのです。なぜなら、この3つの条件は、すべての植物にあてはまる条件ではあるけれど、それだけでは発芽しない植物がたくさんあるからです。
例えば、寒いところの植物の種子は、厳しい冬の寒さを経験させないと発芽することは絶対にありません。とくに、冬に葉を落とす落葉樹の種子のほぼすべてがこの条件に当てはまります。そのため、落葉樹であるドングリを無理やり発芽させたいときは、湿らせたキッチンペーパーではさんで、冷蔵庫の野菜室に3ヶ月間保管して、人工的に冬の寒さを覚えさせることが必要なのです。
身近な植物では、ホウレンソウやパンジーの種子も、寒さを経験させることが必要です。これらの種子を湿らせたキッチンペーパーではさんで、冷蔵庫の野菜室に1週間入れておくのです。このようにして寒さを経験させた種子は、暑い時期にまいても、ちゃんと発芽するので、収穫や開花の時期を早めることができるのです。
発芽の条件は他にもたくさんあります。
例えば、ニンジンの種子は光が当たらないと発芽しないのです。このように、発芽に光が必要な植物は、ニンジン、レタス、シソ、ハクサイなどの他に、ハーブのなかまがあげられます。ところが、日光を当てながら水を切らさずにおくことは大変です。だからこそ、ニンジンの栽培は、発芽させたら90%は成功であるとまでいわれています。
私は、十分湿らせた土にニンジンの種子をまいてから、もみ殻をうすくかぶせて水をたっぷり与えることで、この問題を解決しました。ちょっとした自慢になりますが、近所の農家の方に「ニンジンの栽培が上手ですね」とほめられたので、もみ殻が手に入るようでしたら、昔ながらのこの方法を皆さんも試してみてはいかがですか。
反対に、光が当たると発芽しない植物もあります。トマト、キュウリ、カボチャ、ネギ、タマネギなどの野菜や、パンジー、サルビア、コスモス、マリーゴールドなどの草花が代表的です。これらの種子は、種子をまいたら、光が届かないように、しっかりと土をかぶせる必要があります。
さて、打出中学校では夏休みに理科の課題としている自由研究の多くが、大津市科学作品展を経て、滋賀県の学生科学賞県展および作品展に進みました。その中で、打出中学校の多くの研究作品が受賞することができました。
もしも、県の代表に選ばれたなら、日本学生科学賞に出品されて審査されます。そして、内閣総理大臣賞をはじめとする賞金つきの各賞に入賞すれば、東京で皇室の面前で表彰されるという仕組みになっています。
その日本学生科学賞にて、2021年度の内閣総理大臣賞を受賞したのは、千葉県の市立中学校2年生の生徒でした。この生徒の「オシロイバナの種の研究〜発芽能力を手に入れるのはいつか〜」という研究は、種子の発芽条件について、驚きの新発見をもたらしました。その新発見とは、発芽するためには、種子が乾燥することが条件となる植物が存在するということでした。つまり、オシロイバナの種子を採取してからすぐにまいても発芽しないけれど、乾燥機で種子を十分に乾かしておくとちゃんと発芽するということです。オシロイバナの種子は乾燥を経験しないと発芽しないのです。
「種(たね)をまく」という表現は、「将来の成功のために、今から準備しておく」ということを意味します。 種子が発芽する条件は、「水と空気(酸素)と適切な温度」の3つの共通点の他に、植物によってそれぞれに適した条件がさらに必要でした。私たち一人ひとりにも違いがあるので、努力を実らせる方法も、それぞれの人に合った方法があるのだと思います。
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2026/01/30
映画「風の谷のナウシカ」の腐海と琵琶湖底の浄化システム
宮崎駿監督による「風の谷のナウシカ」はとても有名な映画です。この映画は、文部科学省(当時は文部省)の選定を受けたアニメーション作品でもあり、映画のタイトル場面に「文部省推薦」と書かれていたことに驚きました。選定された理由は、環境保全や人間愛について優れたメッセージ性を持っているからだそうです。環境保全の観点でこの映画を観ると、人間が住めない腐海(ふかい)といわれる場所が、世界を本来の姿に戻すための「浄化」の場所であることに主人公のナウシカが気づくことが、大きな意味を持っていることがわかります。ナウシカは、腐海の植物が世界の毒を吸い上げ、硬い結晶にして無害化していることを発見します。そして、「その砂はこの世界の土や空気や水の毒が結晶したものであり、腐海は瘴気として少しだけ毒を出しながら、実はこの世界を『浄化』しているのだ」と語っています。
「浄化」とは、環境を本来の正しい状態に戻すことを意味します。映画では、毒を結晶化して石に変える腐海を「浄化システム」として位置づけています。
それでは、生徒の皆さんは、琵琶湖にも、有害物を結晶化して石に変える「浄化システム」があると思いますか。
琵琶湖の環境保全において、最も深刻な課題は「富栄養化」です。これは、リンという養分が大量に流れ込み、水草や植物プランクトンが異常発生する問題です。リンは家庭排水や農業排水に多くふくまれています。例えば、コップ1杯の琵琶湖の水に、しょう油を1滴だけ加えて明るい場所に置いておくと、2週間もたてば植物プランクトンが異常に増えて黒板のような濃い緑色の水になってしまいます。(このことは、「校長室より2025/04/25」で詳しく説明しています。)今では、リンを含まない洗たく石けんが主流となり、下水道が整備され、にごった水を排水しない農法などの工夫がなされていますが、リンが大量に琵琶湖に流れこんだ過去の失敗をくり返さないことが求められています。
また、もう一つの大きな課題は、過去の産業廃棄物などにふくまれていた、ヒ素やカドミウムなどの有害物が地下水にとけて琵琶湖に流入していることです。
それでは、以上のリン・ヒ素・カドミウムについて、結晶化して石(鉱物や宝石)に変える「浄化システム」が琵琶湖に存在するのかを考えていきます。
私は昔、琵琶湖の湖底の堆積物を調べている先輩の研究の手伝いをしたことがあります。その中でいくつかの興味深いことを発見しました。それは、湖底の堆積物にふくまれているプランクトンの死骸が石に変わっていたことでした。プランクトンが死ぬと、雪のように水中をただよって、湖底に降り積もります、そのプランクトンの死骸を核として、何かが付着して結晶化していたのです。
顕微鏡で観察すると、この石には2種類あって、湖底の地面付近では、プランクトンの死骸が茶色におおわれて、茶色の石に変化していました。この石は湖成鉄(こせいてつ)とよばれるもので、水中の鉄分が付着したものでした。この湖成鉄は、リンや有害なヒ素とカドミウムを吸収して固定しているので、琵琶湖の「浄化システム」で間違いないと考えられます。
もう一つの石は、宝石のように美しい藍鉄鋼(らんてっこう)とよばれる石です。こちらは、湖底の少し深いところにふくまれていました、やはりプランクトンの死骸を核にして、羽を伸ばすように結晶化して、濃い青(藍色)の美しい石に変化していました。この藍鉄鋼は、おもにリンを成分としています。したがって、リンを吸収して石になり、琵琶湖の富栄養化をおさえるはたらきをしています。したがって、これも「浄化システム」で間違いないと考えられます。
ところで、これらの「浄化システム」は、微妙なバランスの上に成り立っていて、実は、たいへん危うい状態だと心配されています。万が一、湖底付近で酸素を含んだ水がなくなることが続けば、酸素不足により湖成鉄がとけてしまって、閉じこめられていたリンや有害なヒ素とカドミウムが放出されてしまうのです。また、湖底の堆積物に閉じこめられていた大量のリンも一斉に放出されてしまうのです。このようなことが現実になれば、きれいで安全な飲み水がなくなってしまうかもしれません。
さて、琵琶湖のような深い湖は、上下2つの湖に分かれています。春から夏の間に光がとどく表層だけが温められて、深層との温度差ができるため、密度の関係で表層と深層の水が混ざらなくなってしまうからです。そのため深層では、湖底に積もったプランクトンの死骸が腐るときや、湖底にいる生物の呼吸のときに、水にとけている酸素がどんどん使われて、水中の酸素がだんだん減っていきます。
毎年、ちょうどこの時期に、比良山地から吹き降ろされる冷たい風が琵琶湖の表層を冷やします。そして、表層の水温が深層と等しくなると、上下2つの湖の境目がなくなって、ようやく深層に酸素がとどけられるのです。この現象は、「琵琶湖の深呼吸(全層循環)」と呼ばれています。
この「琵琶湖の深呼吸」のおかげで、酸素をふくんだ水が湖底にとどけられ、琵琶湖の「浄化システム」が保たれ、リンや有害なヒ素やカドミウムなどが、結晶化して石となり、湖底に閉じこめられます。そのため、「琵琶湖の深呼吸」が今年もちゃんと起きてくれるのだろかと、専門家の方々が心配しています。
「今年も無事に『琵琶湖の深呼吸』が確認されました!」という、うれしいニュースを待ちたいと思います。
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2026/01/26
美味しい大根の見分け方
先週、特別支援学級が栽培していたダイコンが廊下にならべられました。ダイコンはどれも大きくて、たいへん見事な出来でした。みんなで一生懸命収穫し、付着していた土をていねいに水で洗い落としたそうです。ところで、ダイコンを収穫している様子を見て、「さすがだなあ」と感じたことがあります。 生徒の皆さんは、ダイコンを収穫するタイミングをどのようにして決めたらよいかを知っていますか。
収穫が遅れると、ダイコンの中に穴ができたり、割れたりしてしまうのです。かといって、早めに収穫すると、水分が十分に貯えられていないので味が悪くなってしまうのです。
収穫するタイミングのヒントは、ホームページの「学校アルバム」に掲載したダイコンの写真の中にもあります。それでは写真のダイコンの葉に注目してみてください。ダイコンの外側の葉が下向きに生えていることに気づきましたか。ずばり、写真のような時期こそ、収穫の絶好のタイミングなのです。
なぜなら、葉でつくられた栄養分がダイコンに十分に貯えられたら、葉が役割を終えるので、外側の古い葉から順にたれ下がってくるからです。つまり、写真のように外側の葉がたれ下がっていたら、収穫に適した時期なのです。そして、このまま放置すると、たれ下がった葉から順に黄色くなって枯れていき、収穫の時期を逃してしまいます。
お店で売っているダイコンは、葉が切り落とされています。葉をつけたままにしておくと、葉の気孔から水が蒸散してしまうので、ダイコンの中の水分が減ってしまい、日持ちが悪くなるからです。もしも、葉がついたままのダイコンがお店で売られていたら、葉がついたまま買ってください。ダイコンの葉はダイコンそのものよりも栄養分が豊富で、ビタミンなども多く含んでいるので、炒め物や味噌汁、ふりかけなどにして、美味しくいただくことができると思います。
さて、生徒の皆さんは、「ダイコンは大きな根?」という説明文を中学1年の国語の授業で読んだと思います。その中で、ダイコンについて初めて知ったということがたくさんあったのではないでしょうか。
例えば、ダイコンの食べている部分は根だけでなく、上の方は胚軸という茎のもとになる部分だということが書かれていたと思います。そして、ダイコンの上の方の胚軸の部分は、根で吸収した水分や葉でつくられた栄養分を運んでいるので、水分が多くて甘みが強いことも書かれていました。また、ダイコンの下の方の根の部分は、土の中の虫に食べられないように辛い成分が多く含まれていることも書かれていました。このような味の違いを生かして、ダイコンの上の方と下の方を料理に合わせて使い分けるとよいことも書かれていました。
なお、「ダイコンは大きな根?」という説明文には書かれていませんが、ダイコンの胚軸の部分と根の部分の境目は、簡単に見つけることができます。それでは、ホームページに掲載したダイコンの写真を見てください。ダイコンの半分くらいが地上に出ていることに気づきましたか。生長したダイコンは、土から半分くらい出ているものなのです。つまり、ダイコンは、土に埋まっている部分が根であり、地上に出ている部分が胚軸なのです。地上に出ている胚軸は、茎の役割をしているので、葉緑体があります。そのため、ダイコンの地上の部分は光合成をしており、緑色をしているのです。
それでは、美味しいダイコンはどんな形をしているのかを考えていきます。
収穫したダイコンの中に変形したものができてしまうことがあります。例えば、たくさんの根に枝分かれしてしまったものがあります。また、ダイコンの根の部分をよく観察すると、小さなくぼみが、普通はまっすぐたて一列にならんでいるのですが、ねじれるようにならんでしまっているものがあります。
実は、以上のような形や特徴が現れた場合は、栽培方法が悪かったといえるのです。その場合、ダイコンの本来の甘みやみずみずしさが損なわれています。
では、栽培方法にどんな失敗があったのでしょうか。
昔から、「ダイコンを育てるときには、はじめに3回以上耕しておけ」と言われています。なぜなら、土を1回しか耕していないと、ゴロゴロした土のかたまりが残ってしまい、かたまりを避けるように根が枝分かれしてしまうからです。また、「ダイコンには、くさい臭いが残る未熟な肥料をあたえてはならない」とも言われています。なぜなら、くさい臭いが残る肥料は、有害な気体を発生させてしまうために、根が傷つけられて枝分かれしてしまうのです。このように先の方が枝分かれしたダイコンは、ストレスから身を守るために、辛い成分や苦い成分を普通よりも多く含んでしまっているのです。
さて、生徒の皆さんは、中学1年の理科で、ダイコンは双子葉類であることを学習したと思います。根のつくりが主根と側根に分けられることが双子葉類の特徴です。太いダイコンそのものが主根であり、小さなくぼみがならんでいるところに、側根が生えていたのです。
ダイコンの小さなくぼみに注目して考えると、農地の管理が不十分で、水が不足したり土が硬かったりすると、根がすくすくと生長できないので、側根がねじれるように生えてしまうのです。つまり、ダイコンの小さなくぼみがねじれるようにならんでしまうのです。このようにくぼみがねじれてならんでいるダイコンも、ストレスから身を守るために、辛い成分や苦い成分を普通よりも多く含んでしまっているのです。
ところで、お店にならんでいるダイコンの太さが均一で同じような形をしているのには、農家の栽培方法に秘密があります。
その秘密は、ふたばの形にあります。昔から「ダイコンのふたばの形はハート型がよい」と言われています。研究によると、整ったハート型のふたばのダイコンは、根の太さが全体的に均一でまっすぐのびることが分かっています。一方で、ふたばの形が角ばっているものは真ん中が太いダイコンになり、細長いものは先の方がやせ細ったダイコンになり、丸いものは丈が短いダイコンになるそうです。だから、農家は一か所に何粒かの種子をまいて、ふたばが開いたときに、整ったハート型の苗だけを残しているのです。
ダイコンの栽培は簡単ではありません。種子をまいて水をやるだけでは美味しいダイコンはできないのです。農家の方は、美味しい大根をつくるために研究や経験を重ねておられるのです。
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2026/01/20
氷の下の春
今週も冷えこみが厳しく寒くなるという予報がありますので、体調管理に気をつけてください。また、いたるところで路面が凍結する恐れがありますので、通学にも十分に気をつけてください。さて、生徒の皆さんは、池や水たまりに氷が張っている様子を見たことがあると思います。あちらこちらの水たまりに氷が張ると、ついつい割ってみたくなるものです。有名な俳人 長谷川かな女先生もこのことについて俳句を詠んでおられます。
初氷 割りて登校 下校かな
ところで生徒の皆さんは、水が水面から凍ることに疑問を感じたことはありませんか。また、水を入れたコップに氷を入れると、氷が浮かぶことに疑問を感じたことはありませんか。
実は、身の回りのほぼすべての物質は、液体から固体になるときに体積が減り、密度が大きくなるため、自分自身の液体の中に固体を入れると浮かばずに沈むものなのです。そのため、液体が凍る(凝固する)ときには、液面ではなく底の方から凍るのが普通なのです。例えば、中学1年生の理科で、液体のロウを冷やすと、冷やされた液体のロウが下の方へ沈んでいき、下の方から凍っていく(固体に変化する)様子を学習したと思います。
また、小学生のときに、水を容器に閉じ込めて、冷やしたら水の体積が少しだけ減ることを学びました。水は冷やされると、体積が減って密度が大きくなるのです。そのため、冷やされた水はどんどん底の方へと移動していきます。ところが、水は固体(氷)に変化するときになると、水は例外的に六角形の結晶形をつくるので、逆に体積が増えるのです。例えば、ペットボトルを満水にしてから冷凍庫で凍らせると、ペットボトルがふくらんでまんまるになってしまうのです。このように水が氷に変化すると体積が増えて密度が小さくなるため、氷に変化するにつれて浮かび上がり、水面から凍りつくのです。
つまり、水の性質は身の回りの物質の中では代表的な例外であり、固体(氷)が液体(水)に浮かび、液面から凍っていくのです。
それでは、もしも氷が水に沈むとしたら、どのようなことが起こってしまうのかを考えてみてください。
例えば、氷や雪が水底に沈んでしまうと、水底で生活している貝やエビなどが生きていくことができないと思います。水底の生物が氷に閉じこめられて凍死してしまうからです。同じように水草も冬の間は枯れてしまうでしょう。また、底の方から凍っていくにつれて、魚たちはすみかを追われ、水面へ移動せざるを得なくなります。そのため、魚たちはかくれることができなくなって、水鳥に食べつくされてしまうかもしれません。
このように、例外的に氷が水に浮かび、水が表面から凍ることは、池や小川の生物の命を守ることにつながっています。また、水面が凍ると、できた氷が冷たい空気との間に層をつくります。これによって、氷の下の水温が0℃以下に下がることが防がれて、どんなに冷えこみが厳しくても、水中の温度が下がりすぎないように保たれるそうです。このように、氷の下にも温かい水があり、春が始まっている様子を詠んだ俳句がありますので、次に紹介しておきます。
残る氷 水底(みなそこ)の 春日和 (作者不詳です)
今日から「大寒」といわれる一年でいちばん寒さが厳しくなる期間に入りました。節分までのこの時期を乗り越えることで、暦のうえでは春を迎えます。自然界は少しずつ春に向けて動き始めています。
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2026/01/14
馬は1本指で駆ける -ポケモンは進化するとはいえない-
今年は午(ウマ)年です。馬が駆けるように飛躍して、物事が大きく発展する「何でもウマくいく年」と言われてします。昔から馬は大切にされ、日本の伝統行事と深いかかわりがありました。例えば、神事として馬上から的に矢を射る様子をテレビなどで見た人もいると思います。身近なところでは、毎年近江神宮で行われていますので、自分の目で実際に見た人もいるのではないでしょうか。この神事には馬術と弓術の両方を合わせた技が必要です。馬術は「動の動き」で、弓術は「静の動き」なので、それらを組み合わせてさっそうと駆ける様子は、たいへん見ごたえがあります。今年は6月1日に行われるそうですが、午年ということもあって、たくさんの方が見に行かれるのではないでしょうか。
さて、生徒の皆さんは、進化という言葉を聞いたことがあると思います。進化は中学3年生の理科で学ぶので、1、2年生は「ポケモンが進化する」といえば、聞いたことがあると思います。
例えば、ポケモンでは、ピチューがなついた状態でレベルアップするとピカチュウに進化し、ピカチュウに「かみなりのいし」を使うとライチュウに進化します。もちろん、他のモンスターについても、レベルアップが基本ですが、特別なアイテム(進化の石など)、通信交換、特定の条件(なつき度など)で、姿や能力が変化します。
ところで、3年生の皆さん、何かおかしいと思いませんか。「ポケモンの変化を進化とよんではいけない」ということに気づいていましたか。
進化というのは、生物が世代を重ねる間に遺伝的な性質が変化することです。簡単にいうと、私が生きている間に私が進化することはありえません。進化するというのは、私とは似ているけれど、私とはちょっと違う子どもが生まれ、それが繰り返されることで、子孫に私と異なる大きな変化ができてくることです。
つまり、「ポケモンの変化」を「ポケモンの進化」と言いたいのならば、ピチューが卵を生んで、その卵から進化したピカチュウが生まれ、ピカチュウが卵を生んで、その卵から進化したライチュウが生まれればよいのです。
実は、私たちが「ポケモンが進化する」とよんでいるのは、正しく言えば「ポケモンが変態する」なのです。
「変態する」とは、生物が成長するにつれて、特定の条件がそろうと、姿や能力を変化させることです。例えば、カブトムシの幼虫は、十分な成長と適温があれば、さなぎに変態します。そして適温と十分な時間があれば、さなぎがカブトムシの成虫に変態します。チョウやセミ、ホタルなどの多くの昆虫も同様に、幼虫からさなぎ、成虫へと変態して、姿や能力を変えることで新しい環境へ旅立つのです。
このように、生きている間に自分の姿や能力を変えることは、進化と言わずに変態とよぶのです。
さて、ウマは、進化を説明するときに、例として必ず登場する動物です。ウマは私たち人間と同じ「ほ乳類」というなかまなので、基本的な構造が同じです。例えば、私たちの手足が全部で4本あるように、ウマも前足と後ろ足を合わせると4本あります。また、ウマの足の指は1本しかないように見えますが、ちゃんと調べると、それぞれの足に私たちと同じように5本の指があるのです。
ウマとよぶことができる特徴を持った生物が地球上に誕生した時代には、キツネくらいの大きさの動物だったと考えられています。この時代は暖かく、森の中で木の葉を食べるのには適した大きさだったそうです。ところが、地球環境が大きく変化し、ウマの先祖にとって苦しい時代が始まったことがわかっています。地球は、寒冷化するとともに乾燥が進み、大森林がなくなって大草原となり、やがて大草原も荒野をはさんでとぎれとぎれとなりました。このような環境の変化に合わせて、大草原で肉食動物から逃げきるために、速く走る能力が求められました。また、とぎれとぎれの草原にたどり着くために、長い距離を歩いても疲れないことが求められました。
これらの問題を解決するために、生徒の皆さんもウマの気持ちになって、四つんばいで走ってみましょう。できるだけ速く走るためにはどうすればよいですか。手を「パー」の形で走るよりも、5本指をそろえて走る方が効率的です。そして、手のひらや、足のうらを地面にべったりつけて走るよりも、つま先立ちで走る方が速く走ることができると思います。そして、5本指をそろえて走るときには、最終的に一番長い中指だけが地面に触れていることに気づきましたか。
このような理由で、ウマは5本指を合体させて、特に中指だけを発達させることで、足全体を軽くし、走るときの効率を高めたそうです。ウマは、人間の中指の先端で立っているような状態であり、1本指で走っているのです。そして、1本指で走るために、中指の骨は太くなり、つめは「ひづめ」となって中指を守るように進化しました。
馬が強力な1本指でさっそうと駆けるように、私たちも大いに飛躍してよい1年にしていきましょう。
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2026/01/09
肉食のウサギ
スキー場などで雪の上にウサギの足跡を見かけることがあります。ウサギの足跡のならび方は「ケンケンパー」に見えるのでとても分かりやすいです。たてに2つならんだ「ケンケン」は前足の足跡で、横に2つならんだ「パー」は後ろ足の足跡です。ウサギの走り方は、前足をトントンと前後に置いてから、長い後ろ足を左右に開いて前方に置きます。そのため、「ケンケン」→「パー」の向きにウサギは進んでいるのです。
生徒の皆さんは、テレビや動物園などでウサギを何度も見ていると思います。それでは、正面から見たウサギの顔を思い浮かべてみてください。
きっと多くの人は、サンリオのキャラクターの「マイメロディ」「クロミ」「ウィッシュミーメル」や、世界的に広く愛されている「ミッフィー」を想像するのではないでしょうか。あるいは、「ちいかわ」に登場するうさぎや、おぱんちゅうさぎを想像するかもしれません。他にも、ポケモンのうさぎっぽいモンスター「ニンフィア」「ヒバニー」や、しまじろうの友だちの「みみりん」を想像する人もいるかもしれません。
本当のウサギは草やニンジンを食べるので草食動物なのですが、草食動物に共通する体の特徴から考えると、以上の9種類のウサギのキャラクターは、すべて肉食動物になってしまうのです。
生徒の皆さんは理科で習ったことを思い出して、「ああそうか!」と気づいたのではないでしょうか。草食動物と肉食動物の違いは何でしたか。
草食動物は、目が顔の横についていて、敵をいち早く察知するために、真うしろに近いところまで見渡せるようになっています。一方、肉食動物は、目が顔の前面についていて、獲物を両目で見えるようにしています。両目で見ることによって、獲物との距離を正確に測ることができるのです。
このような法則に例外はありません。鳥についていえば、肉食動物のフクロウは目が顔の前面についていて、草食動物のハトは目が顔の横についています。同様に昆虫についても、肉食動物のカマキリは目が顔の前面についていて、草食動物のバッタは目が顔の横についています。
つまり、例にあげた9種類のウサギのキャラクターは、目が顔の前面についているので、肉食動物ということになってしまうのです。
本当のウサギは目が顔の真横についていて、顔を正面から見ると、目がわずかに細長く見える程度です。しかも、ウサギをおしりの方から見ても、わずかに目がのぞいて見えるのです。そのため、ウサギはふりかえらなくても、ほぼ360度という非常に広い範囲を見渡すことができます。その反面、口元が見えないので、口ひげで食べ物の位置を確かめているのです。
ところで、スターウォーズの映画には、目が顔の前面についている異星人と目が顔の横についている異星人が登場します。つまり、異星人にも肉食と草食がいるということになります。ところが、草食異星人と公表されている異星人の目が、必ずしも顔の横についているわけではなく、このことが残念でなりません。
同じようなことは、2026年現在も人気をほこっている仮面ライダーシリーズにも当てはまります。多くの仮面ライダーはバッタをモチーフにしています。特にライダー1号・2号はトノサマバッタの特徴を強く残したデザインになっています。その特徴とは、2本の触角や2つの大きな目、その間にある小さな目などです。もう生徒の皆さんはお分かりだと思いますが、バッタは草食動物なので目が顔の横についているはずなのに、仮面ライダーの目は顔の前面についているのです。
このように、いろいろな作品のキャラクターが、草食動物をモチーフとしていながらも、肉食動物のように目が顔の前面についているのには、実は大きな理由があります。
私たち人間は雑食動物なので、肉食動物のように目が顔の前面についています。そのため、私たちに親近感を持たせるために、作品のキャラクターをわざと人間に近づけているのです。生物として考えると間違っているのですが、それ以上にかわいさやかっこよさを大切にして創作されているのです。
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2026/01/06
アイデアを形にする方法
打出中学校を卒業され、漫才師としてM-1グランプリ2025優勝という快挙を成し遂げられた「たくろう」の赤木さん、受賞おめでとうございます。心からお祝い申しあげます。優勝を機に、赤木さんのネタづくりの舞台裏がメディアで紹介され、Webにも公開されている独特な「ネタ帳」の存在が大きな反響をよんでいます。その「ネタ帳」は日常のささいなことや街で見かけたもの、会話の断片や意味不明の絵などが記録されており、膨大な量と独特の書き方の中にアイデアの種がつまった「魔法のノート」として注目されています。頭の中にインプット(入力)した情報を「ネタ帳」に言葉や図でアウトプット(出力)しながら多くの芸人やファンの方々から「天才」といわれるほどの笑いを生み出す過程が、夢を実現するために苦労に苦労を重ねる努力の積み重ねであったことにも感動しました。
さて、生徒の皆さん、アウトプットすることは昔から効果的なことだと言われています。授業中に、まず自分で考えたことを言葉や図でノートやタブレットにアウトプットしていると思います。そして、それを他の人に伝えようとする過程で考えていたことが整理されて、学習の質を高めているのです。アウトプットしないと、知識や考えていることがあいまいなままで終わってしまう可能性があるので、自信がなくても頭の中に浮かんだことを自分なりにアウトプットしてみましょう。
ところで「イメージマップ」という方法を使うと、どんどんアウトプットが進むのでアイデアを簡単に形にすることができるのです。とくに、劇の台本や小説を書くときに効果的です。
「イメージマップ」を試してみた生徒の皆さんが短時間で劇のシナリオや小説をなど書くことができて喜んでいましたので、その手順を説明したいと思います。劇のシナリオや小説などを書くときには、いきなりぶっつけ本番で書き始めるのは大変ですので、最初に全体のストーリー(筋書き)を考えておくことが必要です。ストーリーのつくり方のコツは、「6月30日掲載の『いないいないばあ! とヒット作品』」で触れましたので省略します。ストーリーが決まったら、次にプロットとよばれる設計図に重要な設定やアイデアを書きこんでいきます。このプロットとよばれる作業で「イメージマップ」を使います。
「イメージマップ」とは、中心にキーワードを置き、このキーワードからから連想する事柄を枝分かれさせ、さらに細かく関連する事柄を連想してどんどん図に書き加えていく活動です。
それでは、冒険小説のストーリーを「謎の島に漂着した主人公が様々な体験をして、たくましく成長して帰ってくる」とし、プロットを「あやしい石・不思議な植物・変な動物に出会う」ということにして、さっそく物語をつくっていきます。
「あやしい石」をキーワードとして「イメージマップ」を用いると、例えば「七色に輝く」とか「触れると情景が見える」とかが連想され、「触れると情景が見える」ということからさらに「親切にされた人を思いだす」などが連想されるので図に書き加えていきます。このようにしてキーワードに関連して連想した事柄を次々にアウトプットしていきます。その図を見ながら、主人公が「あやしい石」を見つけたときの具体的な行動を物語として文章にまとめていくのです。このように、あらかじめ「イメージマップ」を用いてキーワードからイメージを広げておくことで、豊かな内容の物語を書くことができるようになるのです。
もしかすると、「不思議の国のアリス」という有名な物語も、「ウサギの穴」「涙の池」「いもむし」などのキーワードから、「イメージマップ」で自由に連想した事柄をルイス・キャロルが書きとめたのかもしれません。また、ドラゴンクエストのようなロールプレイングゲームでも、旅先で出会う予定の事柄をキーワードにして、そこから自由に連想した事柄を壮大な物語にまとめていたのかもしれません。
他の使い方としては学習の整理などがあります。例えば、中心に「奈良時代」というキーワードを置くと、そこから「東大寺大仏」や「律令国家」などが連想され、そしてその「東大寺大仏」から「聖武天皇」などが連想されます。頭の中にあることをこのように順にアウトプットしてみると、理解が深まったり、不足している知識が明確になったりして、新たな気づきも生まれるものです。
「イメージマップ」を用いると連想したことが簡単に次々とアウトプットされるので、一度試してみてはいかがですか。
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2026/01/02
「模倣(もほう)」と「創造」
昔、海外へ出かけたときに、「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の両方のイラストが印刷されたTシャツが販売されていました。著作権料はどうなっているのだろうと思い、買うことはありませんでした。勝手に作品をコピーして販売することは禁止されているはずです。自分で工夫してつくり出すのでなく、すでにできているものをまねることを「模倣」といいます。これに対して、人まねでなく新しいものを自分からつくり出すことを「創造」といいます。
生徒の皆さんは、「模倣」と「創造」の境界線をどのように引いていますか。
さて、「人魚姫」は世界中でよく知られている童話です。作者のアンデルセンはすでにお亡くなりになっていて、世界著作権保護期間を大幅に過ぎているので、これをもとにした小説や絵本、映画やゲームを誰もが自由につくることができます。このようにしてつくられた作品のそれぞれには、新たな著作権が生じます。その中のひとつ「リトル・マーメイド」は、世界中で愛されているディズニー作品です。そのため、「リトル・マーメイド」についても勝手にコピーして販売するようなことはできません。
「リトル・マーメイド」は、「人魚姫」をもとにつくられていますが、「人魚姫」の「模倣」なのか、それとも新たな作品として成立していて「創造」といってよいのか、生徒の皆さんはどちらだと思いますか。
そのことを考えるために、はじめに「人魚姫」の物語を連想するキーワードをいくつかあげてみましょう。人魚∞声とひきかえ∞無償の愛∞バッドエンド(ざんこくな結末)≠ェ物語を象徴していると考えられます。今度は「リトル・マーメイド」の物語を連想するキーワードをいくつかあげてみましょう。人魚∞声とひきかえ∞自立心∞ハッピーエンド(幸せな結末)≠ェ物語を象徴していると考えられます。
ところで、似ているか似ていないかを調べるときは、ベン図がとても役に立ちます。ベン図は数学者が考案した関係を調べるための手法です。
それではベン図で調べていきましょう。一部が重なるようにして2つの円を描き、一方の円を「人魚姫」として、もう一方の円を「リトル・マーメイド」とします。すると、2つの円の重なる区域には、2つの物語に共通した人魚∞声とひきかえ≠フキーワードが入ります。そして「人魚姫」の円の残りの区域には、無償の愛∞バッドエンド≠ェ入り、「リトル・マーメイド」の円の残りの区域には、自立心∞ハッピーエンド≠フキーワードが入ります。
このようにして調べていくと、「人魚姫」と「リトル・マーメイド」には、決定的な違いがあることがわかります。共通したキーワードがあるにしても、その他のキーワードが決定的に異なっています。つまり、「リトル・マーメイド」は「人魚姫」を「模倣」しつつも、ハッピーエンド≠ノ至るような新しい価値を「創造」していたのです。
実は、日本の「まなぶ(学ぶ)」の語源は「まねぶ」ともいわれています。先人の知恵を「模倣」することから学習が始まるという意味です。良いと判断した部分を主体的に取り入れ、最終的にその人ならではの独自性へと発展させることが大切とされているのです。
例えば、研究者は自分の研究を始める前に、関連する論文や文献をすべて読みこみ、何が分かっていて何が分かっていないのかを必ず把握しています。その上で、未解決の問題点について、自分らしく研究に取り組み、時代を一歩前へ進めておられます。
生徒の皆さんは、大好きな漫画のキャラクターや絵画を「模倣」して描いたことはありませんか。その積み重ねの中から自分らしい作風が育ち、新しい作品が「創造」されていくのです。
必要だと自分が判断したことを「模倣」して、主体的に考えながら、新しい価値を生み出していくことこそが「創造」なのです。
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2025/12/29
鉄砲と望遠鏡
新年の始まりを、黄金色に輝く太陽とともに晴れやかな気持ちで迎えたいものです。お正月の太陽が「めでたい」といわれているのは、新年最初の光を浴びることで神聖な力を授かると日本神話でいわれていることや、日光が農作物の生長に欠かせないので一年の豊作を願うことなどに由来しているそうです。
さて、生徒の皆さんは、日本で初めて望遠鏡を自作して太陽の観測をした人が滋賀県にいたことを知っていますか。その人の名前は、国友一貫斎(くにとも いっかんさい)で、江戸時代に鉄砲をつくる仕事をしていたのです。
当時の鉄砲は、火縄銃(ひなわじゅう)です。火縄銃は種子島に伝来して以来、扱いやすいことから戦国国時代の戦術を大きく変えたことで有名です。その頃は日本近海に外国船が現れており、日本の国防が心配されていたため、火縄銃や大砲の大量生産が求められていました。そこで一貫斎は、火縄銃製作方法の統一を図り、火縄銃製作のマニュアルをつくりました。このマニュアルがあれば、鍛冶職人の腕前でどんな大砲でも製作することができたそうです。当時、火縄銃の製作は、師匠から弟子へ伝える秘密として扱われていましたが、このようにして常識を打ち破ったのが国友一貫斎です。
一貫斎は、鉄砲の筒をつくる技術を生かして、自分が天体観測をするために望遠鏡を自作しました。
以前からレンズで光を集める「屈折望遠鏡」は製作されていましたが、鏡で光を集める「反射望遠鏡」では国産第一号となりました。しかも、オランダから伝わっていた「反射望遠鏡」よりも、倍率が高くてくっきり見える高性能なものでした。一貫斎は、この望遠鏡で月のクレーターや木星の衛星に気がつき、月・太陽・金星・木星・土星の見事なスケッチを残しています。
ところで、人類史上初めて望遠鏡をつくって天体を観測したのは、ガリレオ・ガリレイです。ガリレオは、望遠鏡で太陽黒点を観測し、黒点の位置が毎日東から西へ移動することから、太陽が自転していることを発見しました。
一方、一貫斎は1年以上にわたって計216回も、太陽黒点の連続観測を行なっています。試しに私はこれらの記録を順にならべてみました。すると、黒点の位置が決まった向きに毎日移動することがはっきりとわかりました。おそらく、一貫斎も太陽が自転していることに気づいていたのではないでしょうか。
一貫斎の科学への情熱と職人としての技術力は目を見張るものがあります。日々の仕事の中から、ひときわ大きな業績を残しておられます。国友一貫斎に関連して、長浜市国友町に国友鉄砲ミュージアムが開館しています。その名は今以上に日本中で知られてもいいように思うのです。
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