校長室より
2026/07/17
白夜のサンセット
地球儀を輪切りにして、北半球の半円に分度器を重ねたら、赤道が0度、北極点が90度になります。大津駅はちょうど分度器の35度の目盛の地点にあたります。このことから、赤道は北緯0度、北極点は北緯90度、大津駅は北緯35度ということになります。JR大津駅の1・2番ホームの京都寄りの端には、青い地球と赤色の鉄道レールをモチーフにしたモニュメントが設置されています。この地点がちょうど北緯35度線上に位置していることを示しているので、私は記念にと、このモニュメントをちょっとだけ触ってみたことがあります。
そして、まだ実現はしていないのですが、赤道も触ってみたいと思っています。赤道に赤い線が引かれている観光名所として最も有名なのは、南米エクアドルの首都キト近くにある赤道記念碑公園です。地面に引かれた赤い線をまたいで、北半球と南半球に同時に立つ体験をしてみたいなあと思っています。3月12日に掲載した「校長室より:影がなくなる国々」のように、赤道では春分と秋分の日に影がなくなるので、赤道直下でそのような記念写真も撮ってみたいなあと思っています。
ところで、北半球の日本では、夏は昼間が長くて冬は夜が長いです。このような昼間と夜間の時間差は、緯度が高くなる(北へ行く)につれて大きくなります。例えば、夏は大津よりも北海道の方が日照時間は長いのです。さらに北に行って、北ヨーロッパやロシア北部、カナダ北部では、もっと昼間の時間が長くなるのです。
私は以前に研究論文を発表するために、夏期休業中にロシア連邦第2の都市サンクトペテルブルクへ行ったことがあります。そこでまず気づいたのは、昼間でも太陽があまり高く昇らないので陽ざしが柔らかで涼しかったことです。そして20時になっても太陽が沈まず、21時になっても夕暮れのように空が明るいので、大通りには人があふれていて、とてもにぎやかでした。このように夕方の時間が長いので、自由な時間にいくつかの土産店をめぐって気にいった形のマトリョーシカをいくつか買うことができました。観光地なのでお土産店がたくさんあり、とくに名物のマトリョーシカはいろいろなサイズや形が販売されていたのです。ピアノを弾くネコの中からネコが4回も出てくるものや、クリスマスツリーの中からクリスマスツリーが3回も出てくるもの、家族の顔に似ていてその顔の人形が4回も出てくるものなどを選びました。レジにならぶと、店員さんたちがもじもじしながら、英語が得意そうな若い方をそっと前に押し出しておられたのが印象に残っています。
さらに北の方へ行くと、一晩中、太陽が沈まない「白夜」といわれる現象が起こります。私が「白夜」に興味を持ったのは、先輩の理科教員に見せていただいた一枚の絵葉書がきっかけです。この絵葉書には「白夜」の24時間の太陽が撮影されていました。
生徒の皆さんは、「白夜」となる日の、1日の太陽がどのような道すじをたどっているのかを想像してみたことがありますか。絵葉書を見ると、太陽が沈まない様子がよくわかるようになっていました。沈んでいく太陽が地平線すれすれまで進み、なめらかに方向を変えて、再び昇っていくのです。つまり、夕日(サンセット)が向きを変えて朝日(サンライズ)に変わるのです。そして、正午には最も太陽高度が高くなるのです。そのようなことがひと目でわかるので本当にすごい絵葉書だと思いました。もちろんこのような絵葉書は日本では販売されていません。
となれば、だれもがそのような絵葉書がほしいと思うのではないでしょうか。ようやくチャンスが到来して、ノルウェー王国で研究論文を発表できる機会を手に入れることができました。ノルウェー王国は南北に細長い国で、本土は北緯58度から71度に位置しています。そのため、「白夜」が起こる地域が広く、きっとあのような絵葉書が販売されているに違いありません。私は、知り合いの理科教員全員に、必ずあの絵葉書をお土産にするぞと心に誓って出発しました。ところが、なかなか「白夜」の絵葉書は売ってないものです。大津市を例にすると、びわこ花噴水や石山寺山門などの観光名所の絵葉書がたくさん販売されているように名所や名跡の絵葉書はあっても、空の虹や月と太陽などの絵葉書は売られてないのが普通なのです。それでも、移動するたびに注意して、「白夜」の絵葉書を探し続けました。ようやく見つけることができたのは、お土産店ではなく本屋さんの一角でした。一緒に行った教員の方もこの絵葉書をひと目見ると大変感動されて、友人への良いお土産ができたと喜んで購入されておられました。
ノルウェー王国は日本と違って、たくさんの天然資源に恵まれています。しかしながら、現地の方のお話では、やがて資源がなくなってしまう未来にそなえて、日本のような科学技術立国を目指しておられるということでした。そのようなことがあって、現地校の理科を参観して改善すべきことを教えてほしいと頼まれたのです。他国の授業参観の機会などなかなかないので、喜んで協力することにしました。現地の中学校の理科は、よくのびるお菓子もバネのように重さに比例してのびるのかを調べておられました。リンクから結果をすぐにグラフに表すことができるような仕組みが教科書にそのものに内蔵されていたことがとても印象に残りました。その反面、生徒同士が考えや意見を交流することをほとんど行わないということでしたので、日本ではひとりの生徒が発言したら他の生徒がきちんと聞いているし、発言をつなげることも大切にされていますと伝えました。
このように昼間が長い国の生活感覚はかなり異なっていました。夜中が明るいので時計を見ないと時刻がわかりづらいので、意識的に生活リズムをつくっておられるそうです。夏休みに規則正しい生活を心がけることにちょっと似ています。
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2026/07/14
車石(くるまいし)と京阪電車
中学生の頃、「車石」という和菓子を京都の親戚の方からいただきました。「世の中には、こんなに美味しいものがあるのか…」
と、本当に感激したのです。
大人になってから、もう一度、あの和菓子が食べたいと思い、和菓子の名前を頼りにして京都の親戚に聞いてみると、どうやらどこかの百貨店でたまたま買ったものだったことがわかりました。食べ物の執念はすごいもので、私は京都のいろいろな百貨店をめぐり、「車石」という和菓子を置いていないかを聞いてまわったのです。その結果、ようやく大津から出店されている和菓子屋さんで売っていたという情報を手に入れることができました。
期待に胸をふくらませて、そのお店を訪ねてみると、「車石」はつくっていたけれど、事情があって今は販売していないということでした。私はとてもがっかりしたので、お店の方に無理は承知で、中学生の頃に食べた味が忘れられないことや、どれほど感激したのかということや、どれほど苦労してお店を探していたのかについて、熱く語りました。すると、お店の方が、「それほど思っていただいていて本当にうれしい。私の思いがいっぱいつまったお菓子でもあるので、必ず復活させるので楽しみにしていてほしい」というお返事をいただいたのです。このときの願いが叶ったのかはわかりませんが、私が探し求めていた和菓子が、当時の味や形そのままに再販されました。私は、中学生の頃を懐かしむとともに、お店の方との会話も思い出しながら、「車石」を美味しくいただいたのです。
さて、和菓子の「車石」の名前には由来があります。本来の「車石」は、江戸時代に大津〜京都間の東海道(逢坂山)で、牛車をスムーズに通すために路面に敷かれた溝がある花こう岩の名前です。雨天時に土道がぬかるんで牛車が立ち往生するのを防ぐために、車輪の幅に合わせて石を12キロメートルにわたって2列に敷きつめたものです。車輪が石の上を通ることで摩擦が減り、それまで牛一頭につき数人での補助が必要だった荷物輸送が、馬一頭だけで運搬できるようになるなど、大きな役割を果たしていたそうです。そのため、「車石」そのものが、鉄製の車輪によってけずられてしまい、溝が刻まれたのです。和菓子の「車石」は、この溝にちなんで、中央がへこんだ形をしています。
大津市内で「車石」を見学できる代表的な場所は、JR大津駅前広場、逢坂の関記念公園、大津市歴史博物館の3か所です。ここでは江戸時代の街道整備を今に伝える貴重な実物を見ることができます。他にも附属小学校の校庭にも移設されていますが、入校許可が必要です。これらの「車石」を注意深く観察すると、溝が十字に刻まれたものもありました。なぜ溝が十字に刻まれたのかというと、溝が深くなりすぎた「車石」を交換するかわりに、直角に回転させて敷き直すことで、「車石」を長持ちさせたからだそうです。
ところで、大津〜京都間の東海道(逢坂山)では、現在は京阪電車が運行しています。江戸時代には「車石」を敷きつめないと牛車が通行できないほどなので、京阪電車にとっても上り下りが困難な区間です。 この逢坂山越えは、急カーブと急な坂が連続する厳しい区間なのです。まるで登山鉄道なみの急な坂道で最大61パーミル(1000m進むと61m上がる)の傾きや、半径40mという鉄道としてはきわめて急なカーブをクリアしなくてはなりません。そのため、線路(レール)は、簡単には摩耗せず破損しないような丈夫なものが必要とされました。
私が中学生の頃、社会の時間に「京阪電車の線路(レール)には、すり減っているものと、ほとんどさびずにきれいなものがあるのはなぜですか」という課題が出されました。京阪電車の線路は、現在では主に日本製鉄などの国産のレールが使用されていますが、当時はドイツを含むヨーロッパ製やアメリカ製など様々な国のレールが採用されてきた歴史があったそうです。中学生の皆さんは、すべて国産のレールでまかなえばよいとは思
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